自治体との共創事例

正会員限定催事として福島県いわき市視察を実施しました

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構(略称:ODS)は、ODS正会員限定催事として、2023年1月12日(木)午後~13日(金)にODSと連携協定を締結している福島県いわき市への表敬訪問および現地視察を実施いたしました。

いわき市では地域振興や地域の課題解決に向けた様々な実証事業や復興支援事業等に取組まれています。本視察では、そうした事業の取組地や今後の実証予定地などを訪問視察したほか、会員企業各社の技術やサービスなどの商材をいわき市関係者にご紹介し、いわき市における今後の連携事業検討のご参考としていただきました。

今回ご参加できなかった会員企業各位の参考にしていただきたく、視察内容についてご報告をさせていただきます。

写真:いわき市役所

■いわき市役所を表敬訪問

2023年1月12日(木)13時より、いわき市役所を表敬訪問し、いわき市総合政策部 山田部長、赤津次長、そしてスマート社会推進課 松本課長よりそれぞれご挨拶を賜りました。


視察前の表敬訪問会場はいわき市様のプレスルーム

本視察にはODS正会員611人がご参加され、各社のお取組みや自治体向け商材等についてプレゼンテーションいただきました。また、いわき市スマート社会推進課からは、いわき市がこれまでに取り組んできた各種実証事業等のご紹介や、いわき市に散見される解決したい課題などについてご説明をいただきました。

■中央台地区(いわきスマートタウンモデル地区)の視察

現在、いわき市では、中央台高久地区の市土地開発公社所有地を拠点エリアとして、スマートシティの取組みやウィズ・アフターコロナの社会を見据えたモデル的開発の実施を推進する「いわきスマートタウンモデル地区推進事業」を進めています。本事業は、市がスマートタウンモデル地区を実現するためのまちづくりの方向性(開発ビジョンや基本方針)を示す「いわきスマートタウンモデル地区基本戦略(R4.11.1策定・公表)」を策定し、基本戦略に則してハード・ソフトの事業を実施する民間事業者を公募する官民連携事業です。


画像:いわきニュータウン地区全体図、拠点エリア

いわきニュータウンはJRいわき駅から車で約15分(約7km)ほどのところにあり、独立行政法人都市再生機構いわき都市開発事務所が昭和50年度から約30カ年の計画で造成した、県内で最大級の面積を誇るニュータウンです。計画では面積530ha、計画人口は6,400戸25,000人、現在は5,093世帯12,285人が生活しています(2022年12月31日現在)。ニュータウン内には、3つの小学校、2つの中学校があるほか、福島県立いわき光洋高等学校、医療創生大学も立地しています。

いわきスマートタウンモデル地区推進事業の拠点エリアは福島県営いわき公園を過ぎた一角にあります。東日本大震災以後、このエリアには仮設住宅が設けられていましたが現在は更地となっています。震災後に建築された住宅も多く、震災の仮設住宅からこの地域に移住された方もいらっしゃいます。移住定住地域として戸建て住宅を中心に整備されていますが、戸建てを買うことのできない若い世代の方が住みにくいことも課題です。解決策として市で空き家のリノベーションの推進を図るほか、テレワークの拠点の整備による職住接近の検討もされています。

■いわきFCパークの視察

いわきFCパークは株式会社いわきスポーツクラブが運営する商業施設複合型クラブハウスです。日本初の商業施設併設型クラブハウスとして2017年開業しました。鉄筋造り3階建の建物で延床面積は4,360平方メートルでチームカラーの赤の外壁が特徴的です。内部は1階にいわきスポーツクラブの親会社である株式会社ドームが日本総代理店を務めるアンダーアーマーのアウトレットショップなどが入居しています。2階には英会話教室とジム、いわきFCのロッカールームがあります。3階には飲食店が入居しており、グラウンドに面したガラス窓とテラス席が設置され、試合や練習を見ながら飲食が可能です。一般の方も気軽に立ち寄れる施設で、選手を間近に観戦でき、スポーツを通じていわき市の人々に活力を与える存在となっています。

写真:いわきFCのテーマカラーである真っ赤なエキスパンドメタルと真っ黒な建屋が鮮やかに目を引くデザインです

写真:FCパークは、アンダーアーマーの日本総代理店である株式会社ドームの「いわきベース」の敷地内にあり、いわきベースは同社の物流拠点であり、いわきFCのオーナーでもあります

そのドーム社のノウハウを生かしたフィジカルトレーニングを主体とした練習に特徴があり、選手全員が専門の栄養士が管理する食事を原則3食取り、サプリメントの供給を受けるなど、選手の肉体強化に主眼を置いた練習方針をとっています。その結果、選手の体は他のFCに比べても筋肉量が多いそうです。選手の様々なデータを詳細に分析して最も良い練習を計画しているとのこと。

写真:普段は関係者のみしか入れない、選手ロッカールームも視察させていただきました

写真:3階には飲食店が入居し、間近でサッカーの試合や練習を観戦しながら食事を楽しめます

■自転車文化発信・交流拠点・ノレル?の視察

いわきFCパークにはいわき市が運営している自転車文化発信・交流拠点の「ノレル?」もあります。屋号には、あなたの「乗れる?」に応える場という意味がこめられています。自転車を販売するだけでなく、サイクリングに関連するイベントなども開催されます。また市民に広く開放しており、FCパーク近隣の子どもたちが気軽に立ち寄って宿題をしたりすることができるワークルームを提供しています。また一般社団法人日本パラサイクリング連盟の事務局もここに入居しています。

写真:自転車+スポーツで地域の可能性を広げるために交流の場を形成することも目的としています

■津波被災にあった薄磯地区およびいわき震災伝承みらい館の視察

2日目は東日本大震災復興に関連する施設を中心に視察を行いました。いわき市庁舎より、まずは海岸線へ向かい津波の影響をうけた沿岸部である「震災復興区画整理地区」を車窓より見学いたしました。

バスで向かう途中、自身が被災者でもある自治体職員の皆様の被災時の状況についてお話をうかがうと共に、海岸線を走りながら当時8m近い津波が襲った地域の様子を目の当たりにしました。

写真:コンクリートの防潮堤が延々と続きます

いわき震災伝承みらい館は地震、津波に加え、原発事故が重なるという未曽有の複合災害に見舞われたいわき市の震災経験を後世へと伝えていくことを目的とした施設です。

写真:甚大な津波被害に遭った薄磯地区に作られたいわき震災伝承みらい館

写真:いわき語り部の会の方から震災時の状況や、その後の復興への道のりを伺いました

東日本大震災で甚大な津波被害を受けたエリアの一つである薄磯地区は、震災前に比べ震災後の人口は56%程度にとどまっているとのことです。また当時住宅が並んでいた沿岸部には防潮堤や防災緑地が形成され、住宅街は盛り土をした高台に再整備を進めています。

写真:薄磯地区における震災復興に向けた新たな津波対策の概要

津波では小学校や中学校も被害にあいました。中学校はその日は卒業式でしたが生徒の被害はなかったものの学校は津波により浸水しました。この泥まみれになった学校の復旧に自衛隊が活躍してくれました。その際に泥に埋もれたピアノが引き出されました。自衛隊員は寄贈品の刻印を見てきっと大切なものであろうと考え、きれいに泥を洗い流してくれたそうです。その後市内の調律師の方の手によりピアノは音を取り戻し、「奇跡のピアノ」としてその年の紅白歌合戦でも演奏され、現在はこのいわき震災伝承みらい館に震災のシンボルとして展示されています。

写真:奇跡のピアノ、毎年震災日の前後に演奏会が開かれて人々の心を温めているそうです

■豊間公園(防災施設)の視察

東日本大震災を教訓に、大災害が発生した際に被災者の救援・救助活動の拠点となる津波防災公園として作られたのがこの豊間公園です。非常用発電、非常用トイレ、非常用コンセント等の防災施設を備えています。

写真:屋根付きの広場、震災発生時には避難所として活用されるドームシェルター

写真:豊間公園の防災施設概要

■いわきららミュウの視察

津波被害により1階部分がほぼ壊滅し、営業停止状態となりました。その後復旧し同年11月25日にリニューアルオープン、ボランティアの方々の支援も受けて約8カ月という比較的短期間で営業再開した施設です。

※写真:ららミュウ、小名浜港に隣接し復興のシンボルとしてのとりあげられる施設でもあります

※写真:ららミュウ施設内では東日本大震災の展示が常設されています

 

市役所でのご挨拶、ご説明に始まり、2日間にわたり貴重なご案内をいただきました。

参加企業の各位は、中央台地区をはじめとする市民の居住地区における交通課題や空き家対策、防犯対策をはじめ、いわき震災伝承みらい館やいわきららミュウ等の視察からは大災害に対してどのような備えを打っていくかなどを視察し理解を深めることができました。そしていわき市が課題として感じ、今後対策を目指すことに対して、ODS会員企業が持つ技術やサービス、ソリューションをいかに適用して地域に貢献できるのかを考える、とても有益な視察と交流を実現することができました。いわきFCパークでは、具体的に動き出した産官連携の成功スキームを学ぶこともできました。

参加いただいたODS会員の皆様も、こうした視察を通じて今後の事業に対する様々なイメージを膨らませることができたのではないかと考えます。さらに、今回の視察で巡り合った会員企業のコラボレーションにもつながることが期待されます。

末筆になりますが、2日間にわたり貴重なご案内をいただきましたいわき市役所の皆様に感謝を申し上げ、視察に関するご報告とさせていただきます。

 

【概要】

開 催 日:2023年1月12日(木)午後~13日(金)午前
企  画:一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構
開催形式:現地集合、現地解散
集  合:1月12日(木)13時 いわき市役所
参 加 者:ODS正会員 6社11名

【行程】