開催報告 ODS第4回研究会 講演③
「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構は2022年1月20日に、第4回研究会「持続可能なまちづくりを目指すSDGs未来都市に選定された自治体の取り組み」を開催しました。本稿では鹿児島県大崎町様のお取組みについてご紹介いたします。

 

「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」
大崎町 企画調整課/一般社団法人大崎町SDGs推進協議会 事務局長 中村 健児 様

大崎町のご紹介

大崎町は鹿児島県の大隅半島、鹿児島市がある反対の半島の中心ぐらいに位置しています。人口は約12,000人で、基幹産業は農業です。全国の20位以内に常に入っているような産出額を誇っており、豊富な農畜産物があります。また、養殖ウナギは全国トップクラスの生産量で、これらを活かしてふるさと納税にも取り組んでいます。鹿児島県内でトップクラスの寄付をいただいていますが、平成27年度には町村の部で全国1位にもなりました。町の特徴的な取り組みとして、20年以上にわたって取り組んできている徹底したゴミ分別をベースにした資源循環のまちづくりがあります。この資源循環のまちづくりを継続する中で、資源リサイクル率日本一を13回獲得しており、このことが町民の誇りにもなっています。

それから2018年に、廃校になった高校の跡地を利用して鹿児島県に整備をしていただいた陸上競技専用のトレーニング施設「ジャパンアスリートトレーニングセンター大隅」があります。国内最大の公認室内競技場が整備されており、この施設を含む周辺のトレーニング環境は陸上競技者にとってはアジアナンバーワンともいえる合宿環境で、国内外から多くの合宿者が訪れています。この環境を生かして、町はあらたな軸として陸上競技を中心としたスポーツ合宿のまちづくりを進めています。

SDGs未来都市としての大崎町

SDGs未来都市としての大崎町の取組みについてご紹介します。大崎町は徹底した分別リサイクルをベースにした取り組みを続けてきまして、この取組みに関心を持つ多くの人が訪れていますが、2018年にはこの取り組みに注目いただいた鹿児島相互信用金庫や慶応義塾大学の連携協定を結び結ばせていただきました。このあたりからリサイクルというものをSDGsの視点で評価していただくようになり、2018年の第2回ジャパンSDGsアワードに応募し副本部長賞を受賞することができました。その翌年にはSDGs未来都市に選定されています。

2019年の未来都市選定にあたり、策定した未来都市計画において2030年のあるべき姿として「世界の人口1万人地域で応用可能な循環型地域経営モデルの確立」というものを掲げました。これは大崎町が長年続けてきたゴミの分別リサイクルが、低コストでしかもアナログということから、大崎町と同規模の自治体であれば、世界のどこの地域であっても同じ取り組みを展開することが可能ではないかという仮説をもとに掲げた姿です。

目指すビジョンとしては、経済面では「大崎型リサイクル課題解決ビジネスの国際展開」、社会面では「まちの資産価値を高める、教育を中心とした、ひとの可能性が広がる多文化共生社会」、環境面では「まち、ひと、しごとの基盤となる低コストで、住民参加のリサイクル事業を、もっと楽に、もっと世界へ、そしてエネルギーの地産地消とゼロウェイスト実現」を掲げています。

こちらは第2期の未来都市計画の際に作った3側面の取り組みの図ですが、図の中心に私が兼務で所属している一般社団法人大崎町SDGs推進協議会が官民連携プラットフォームとして位置しています。この組織を中心に大崎町の未来都市計画の実現に向けて取り組んでいます。

大崎町のリサイクル事業とSDGs

では、なぜこの小さな町がSDGsに取り組むようになったかというきっかけを、遡ってご紹介したいと思います。この写真は大崎町とお隣の志布志市が運営しているゴミの埋め立て処分場です。大崎町はお隣の志布志市と一緒にゴミの処理を行っていますが、これまで焼却処分場が建設されたことはございません。今ご覧いただいているのは現在の埋め立て処分場の姿ですが、私が役場に入庁した1998年は現在のこのゴミの分別リサイクルの取り組みはまだ始まっておらず、この処分場に全てのゴミが運ばれていました。ここに何度か行きましたが、すごい悪臭と虫、それからカラスがたくさんいたのを覚えております。

この埋め立て処分場は、1990年から使用していますが、当初の予定で行けば2004年まで15年間使用する予定でした。しかしながら年々持ち込まれるゴミの量が増えていき、計画期間の2004年までもたないということが1998年頃には予測されたため、何らかの対策を取る必要があるということが課題になっていました。

その時の対策として考えられたのが、焼却処分場をあらたに建設するか、またはあらたな埋め立て処分場を作るかということでした。焼却処分場については、当然ですけれども多額の建設費用とそれからランニングコストがかかってきます。これらがこの小さな町にとっては将来の負担となることが想定されましたので、将来に不安を残すわけにはいかないということで焼却処分場の整備は見送ることになりました。

埋め立て処分場の新設ですが、当時の埋め立て処分場の状況は劣悪な環境でしたのでこういった受け入れてくれる地域が見込めないということからこれも見送ることになりました。その結果、第3の選択肢として、この埋め立て処分場を継続して使う、そのために埋め立てるゴミを減量化する、その手段として分別リサイクルをすることを選択することになりました。

1998年の分別開始時は3品目からスタートし、これまで20年以上にわたって分別を継続しています。これを聞かれるとすごくびっくりされるのですが、現在27品目の分別を行っています。

結果として埋め立て量は8割以上削減され、先ほど2004年までの使用期限ということでしたけれども、先ほどの写真にあった通り、その埋め立て処分場は今も継続して使っています。今後、30~40年使えるんじゃないかという試算も出ています。この埋め立て処分場が継続して使えるようになったこと自体も大きな成果ですが、生ごみが持ち込まれなくなったことから埋め立て処分場の環境というものも大幅に改善され、悪臭もないですし、虫やカラスがくるということもなくなりました。

この大崎町の分別リサイクルのシステムは、住民・企業・行政の三者の連携によって制度が構築され維持されています。全住民は、ゴミを出すためのコミュニティ組織である衛生自治会というものに加入しています。住民の方はそれぞれのご家庭できちんと分別をして、衛生自治会が運営するゴミステーションに月に一回、生ゴミ以外の資源ごみを持ち込むことになります。

このごみステーションは衛生自治会の方々が自ら管理をしていただいてます。ごみステーションに集められたゴミを行政から委託を受けた企業が回収することになります。責任を持って回収していただくと同時に、収集中間処理施設であるリサイクルセンターでまたさらに細分化して分別し、責任を持って次の再資源化する企業に出荷をしていただきます。

そうすることによって、町の中に置いておくとそのままごみなってしまうものが次のところにきちんと出荷されることで資源として循環する形になっています。行政は、こういったところに業務を委託し、それを適正に実行されているか管理するという部分と、大崎町の分別リサイクルがなぜ必要なのかとか、衛生自治会をスムーズに運営して行くにはどうしたらいいか、というような説明会を定期的に開催するなどの支援を行うことで、三者が共同してこのリサイクルのシステムを構築し維持しています。

この三者の連携で、これまで20年以上徹底した分別とリサイクルに取り組んでいますけれども、2001年以降、リサイクル率は70%以上を維持しており、2006年から12年連続で日本一を獲得しています。2018年に一度2位になりましたが、翌年には再度日本一に返り咲きました。

先ほど、リサイクルセンターの方から資源として出荷するということでお話しましたけれども、分別されたごみというものは資源として売買されます。その売買益金はこれまで累計で約1億6,000万円にのぼり、そのまま埋め立ててしまうと単にごみになってしまうものが資源として売買することで収益も生まれています。

また、各家庭で徹底して分別をしていただくということから、ごみの処理費用も全国平均に比べて約2/3程度で済んでいます。これは結果的に、ごみ処理経費も安くすんでいるんですけども、言い換えるとその浮いた分を別の行政経費に充てられるという効果も出ています。

さらに、これはゴミの回収をお願いしている有限会社そおリサイクルセンターという企業ですが、分別リサイクルを開始するにあたって、あらたに設置された企業です。分別リサイクルを始めることによって設立され、今40数名が働いていますけれども、そうした雇用創出にもつながりました。

資源ごみの売買益金が約1億6,000万ということをお話ししましたが、これまでその売買益金は各家庭で生ごみを処理する際の生ごみ処理機購入への補助などに充てていましたが、2019年度からはこの益金の一部を次世代を担う人材の奨学金の原資として活用しています。

大崎町には小学校、中学校しかありません。高校は隣接する市に行ったりしますが、大学に進学するということになると確実に町を出なければいけません。そうなった場合に、どうしても費用がかかってきますし、大学進学で町の外に一回出てしまうと町に帰ってくるきっかけがなかなか無くなってしまいます。そこで奨学金で支援することによって経済的な負担を軽減し、さらに大崎町に帰ってきて10年間在住すると奨学金返済は実質ゼロになります。大崎町にまた戻って来てきていただきたいという思いを込めています。その他、この分別リサイクルの効果としては、ごみの収集活動を通じてコミュニティが活性化したり、あるいは日本一をずっと続けることによって生まれる愛郷心、そういったものも生まれていると考えております。

このように多くの効果を生み出している分別リサイクルですが、低コストのゴミ処理方式ということで、特にゴミ問題を抱える海外からの技術支援の要請というものがございます。インドネシアでは人口増加が非常に著しいということで、ごみ問題も深刻化していると伺っています。そういう中で、これまでごみ問題の解決のためにJICA事業を通じてデポック市、それからバリ州で技術支援をおこなってきました。今後はジャカルタ特別州においても技術支援をする予定となっています。

大崎町はこうした多くの効果を上げてきた分別リサイクルをベースに、SDGs未来都市に選定されました。我々はこれまで愚直に分別リサイクルを埋め立て処分場の延命化という目的で続けてきたのですが、アワードを受賞したり、未来都市に選定されたということで、あらためてSDGsの視点からまち作りというものを考えることになりました。

月に1回の資源ごみ収集所では、例えば乾電池とか蛍光灯など月に1回の回収においてもそれほど量が出ないものがコンテナに分けられていきます。奥の方のピンク色のごみ袋が山になっているのはプラスチックごみだと思いますが、これらが月1回の回収日まで家庭に置かれることになります。そうすると、自分たちの生活の中でどういったごみがどれぐらい出ているかということについて、住民の方々一人ひとりが向き合うことになります。

我々がこのSDGsに取り組むにあたって、そういったものを直視した時にあらためて気づいたことが、大崎町に入ってくる商品はそれほど他の町と変わりはないことです。リサイクル日本一だからといって特別なものを売っているというわけではないのです。

ただ、その大崎町の小売店で販売されている商品というのは、その多くはほとんど町の外から入って来たものです。これが各家庭で消費されたのちに各家庭で分別され、生ごみを除くほとんどのものが、町の外で再資源化されます。大崎町はリサイクル日本一をずっと続けていますが、町の人たちは決して分別が好きなわけではなくて、ごみが発生するから分別しなければならないということで、これは負担以外の何物でもないというのが現実です。

この負担はいつか軽減されるべきであって、そのためにはそもそものゴミを減らす必要があります。それはゴミになる商品が製造される過程が変わらなければならないということに気づいたのが一番の収穫だったと思います。

このあらたな課題と、もともと地域が抱えていた課題、それから2019年に設置された持続可能なまちづくり条例において示した基本理念、これらの実現に向けて、循環をベースとしたあらた3つのコンセプトを元に2021年にあらたな総合計画を策定しました。

2030年に掲げた将来像は「まち・ひと・しごと 世界の未来をつくる循環のまち」ということで、人口12,000人の町が言うにはかなり大きな将来像ですが、こうした将来像を掲げながらその実現に向けて取り組んでいます。

計画の中でこのような大きな目標を掲げましたが、現実問題として、この小さな町の力だけで達成して行くのは不可能ともいえます。したがって、この計画策定と同時に県内で同じようにSDGs達成に取り組もうという企業さんはもちろんいらっしゃいますので、そういった方々に連携を呼びかけて、一緒に我々が目指すまちづくり、我々が達成しようとするSDGsに一緒になって取り組みましょうというようなお声掛けをさせていただきました。その結果、各分野の一生懸命取り組んでくださっている企業さんと連携をして、SDGs達成に取り組もうという体制を構築することができました。これはパートナーシップを構築するというよりも、大崎町だけではできないという現実から生まれたものであり、この結果できたものが今私がおります一般社団法人大崎町SDGs推進協議会です。この協議会は、大崎町の他、県内の報道、金融、教育、それから官民連携の企業が参加しております。

大崎町SDGs推進協議会の役割とプロジェクト

これが私どもの事務所です。学校っぽいのですが、実はこれは県立高校が廃校になり、その教室の一室を借りています。ここに行政から私が、それから官民連携の企業である会社からスタッフが来て事務所を運営しています。

この協議会は、官民連携をさらに推進してSDGs達成に取り組む実行組織というところが特徴です。そのために、様々な企業や研究機関との連携により社会課題の解決に取り組んでいます。そして、取り組みをするにあたっての活動資金としては、企業版ふるさと納税を活用しています。

我々が、こういう風な将来を実現したい、一緒にこの日本一のリサイクルの町で、フィールドで実証実験や、あらたな技術開発とかそういったものをしませんかというようなお声掛けをしながら、その上でその入り口として企業版ふるさと納税の寄付の呼びかけをしたり、連携の呼びかけをしたりしています。

それと、先ほど大学進学と同時にこの町から出て行く子供たちが多いということも申し上げましたが、大崎町自体第一次産業が中心で、なかなか大学に進学した人たちが戻ってきて働くという場所もないというのが現実です。しかしながらこの協議会ができたことによって、地域の中で環境問題に取り組むという新しい仕事を作り出したということも一つの成果と言えます。この協議会のような企業、法人というものをさらに拡大していって、今までは進学と同時に町を出ていった若者を呼び込むとか、あるいは新しい環境問題に取り組もうというような若者を呼び込むということで、持続可能なまちづくりというものも実現していこうとしています。

ちなみに、今回の協議会事業について全国に「こういう仕事がありますけども、大崎町で働いてみませんか?」というようなお声掛けをしたところ、全国各地から応募がありまして、現在5名の方が大崎町に移住して一緒に仕事をしています。

 

この協議会では、プロジェクトを三つの柱を軸として掲げています。研究開発、人材育成、情報発信、この三つが柱となってSDGs未来都市の実現に向けて取り組んでおります。

まず研究開発部門ですが、あらたな生産や消費の形を作り出すために必要な研究、商品開発、カーボンニュートラル実現に向けた取り組み、というプロジェクトを構築しており、この第一弾として昨年10月に「カーボンニュートラル実現に向けたプロジェクトに参加しませんか?」と連携先の公募をしました。

このプロジェクトの原資は、昨年公募があったYahoo!の企業版ふるさと納税を活動資金として充てさせていただきました。大崎町はこれまで資源分別リサイクルをずっと続けてきて、焼却処分と比較して二酸化炭素の排出量が少ないのではないかという考えを持っていましたが、それが数値化されたことはありませんでした。この我々がやっている分別リサイクルというものを他所の町に展開しようとしても「それは一体どういう価値があるんだ」というところを、エビデンスを持って説明することができなかったわけです。

今回このYahoo!の寄付を活用し、そういったエビデンスを得るために研究機関と連携して、分別リサイクルがどれほど環境に良いのかということきちんと研究し、その結果を持ってできるだけ多くの地域に対してこの大崎のリサイクルシステムを展開して行きながら、カーボンニュートラル実現に向けて取り組むというプロジェクトになります。

それから情報発信です。大崎町のリサイクルに関してこれまでも視察に来られた方は結構多いのですが、このSDGsに取り組むようになってからは教育研修旅行として様々な企業が来てくださるようになりました。

以前の視察であれば、行政の方で無料で引き受けていたのですが、こういった地域に価値がある、地域の価値としてリサイクルがある、SDGsの取り組みがあるということで、これをあらたな視察研修ビジネスとして展開できないかと考えました。

今この画面に写っているのはオンラインツアーの様子ですが、こうしたオンラインツアーを通じた視察研修であったり、あるいは現地を訪れる方々を受け入れてリサイクル関連施設をご案内したりという視察研修ビジネスも、新たに構築する予定です。それ以外にも、大崎町の取り組み、協議会の取り組みを、様々な媒体などに情報発信をすることで、さらに連携先を確保したり、あらたにSDGsに取り組もうという人を掘り起こすということに努めています。

それから人材育成分野については、町内の児童生徒に対するSDGs教育の実践ということを行っています。大崎町内の小中学校では、給食で出される牛乳パックを飲み終わった後は全部自分で洗って、それを干して資源として出しています。

そういったことがなぜ必要なのかということ、自分たちが日々やっていることはSDGs達成の取り組みの一つなんだよということを理解していただきながら、自分たちの町が何をやっているか、自分たちは今後成長する中で、どういったことに関心を持ちながら成長していけばいいのか、というところのお手伝いしています。

また全国の様々な大学からも色々なお問い合わせをいただいています。そういった大学と連携しながら、あらたにSDGsに取り組もうとする人材の育成のお手伝いもしています。こういった形で、研究開発、情報発信、人材育成を柱に、今後も大崎町が目指す将来像の実現、SDGsの達成に向けて取り組んでおります。

今回こういった講演の機会をいただきながら、より多くの連携先を確保し、ともにSDGs達成に取り組むということがひいては大崎町の未来都市の実現につながると考えていますので、今後もこうした情報発信などの取り組みを加速化していきたいと考えております。