開催報告 ODS第5回研究会 講演②
「ショートタイムワークアライアンスの取り組み」

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構(ODS)は、さる2月2日に、第5回研究会「多様な方が地域で働ける仕組みづくりを考える ~自治体と地域企業とで取り組むショートタイムテレワーク~」をオンライン開催しました。この研究会では2名の方に講演をいただきました。本稿では講演②、ソフトバンク株式会社 CSR本部 CSR企画統括部 CSR企画部 多様性推進課 宮本明子様のご講演内容をご紹介します。

「ショートタイムワークアライアンスの取り組み」
ソフトバンク株式会社 CSR本部 CSR企画統括部 CSR企画部 多様性推進課 宮本 明子 様

ソフトバンクのCSR活動

誰もが自分らしく活躍できる未来へということで、日進市と進めているショートタイムテレワークですが、この働き方が少しでも社会に広がるように立ち上げた、ショートタイムワークアライアンスについて、そしてそこに至るまでのお話をさせていただきます。

 

ソフトバンク株式会社は、現在約18,000人の従業員がいます。経営理念の「情報革命で人々を幸せに」は、テクノロジーを通じて、世界中の人々がより幸せで充実した生活を送れるようにという思いを込めて、提唱しています。

私が所属しているCSR本部は、「解決までが社会貢献 人がつながるソフトバンク」という理念のもと、「ICTと地域の社会課題と掛け合わせて解決のお手伝いができませんか?」という方針で、現在約160人のメンバーが本部で活動しています。

情報化社会の推進、災害対策復興支援、多様な社会への対応、次世代育成、環境・資源対策という5つの重点領域を中心に活動を進めています。具体的な取り組みとして、例えば情報リテラシー教育では、プログラミング学習の支援、また、CSRの部門が大きくなっていくきっかけとなった東日本大震災以降、災害時における携帯の貸し出しなど行っています。本日は、ショートタイムワーク・障がいのある方の短い時間の働き方と、そこに日進市の中根様からご案内いただいたテレワークを掛け合わせて、ショートタイムテレワーク・女性活躍支援という働き方の取り組みを中心にお話しいたします。

日進市とソフトバンクの連携協定

CSR本部には地域CSRメンバーが日本全国、北海道から九州まで10拠点に約60人配属され、SBグループ内外のアセットを駆使して各地域における自治体の地方創生に貢献していく活動をしています。

60以上の自治体と連携協定を締結しており、子育て支援などの事業連携では、日進市と2020年2月に協定を締結しています。連携事項の中にあるICTを活用した子育て支援に関する部分では、「成長ログサービス」とあわせて、「ショートタイムテレワーク」も一緒に推進することになりました。

多様性推進課チームの取り組み

私が所属しているCSR本部の中の多様性推進課というチームは、多様な社会への対応と次世代育成ということで、一人一人が特性を生かして活躍できる社会づくりをミッションに活動しています。

主に障がいのある方への取り組みが中心となっており、幼少期では「成長ログサービス」、学齢期では「魔法のプロジェクト」、そして、就職期に課題のある方向けには「ショートタイムワーク」といった、各ステージに合わせた取り組みを中心にしています。

「成長ログサービス」は、電子母子手帳というとイメージしやすいのかなと思います。このアプリを使うことで、早期に障がい特性などを把握・記録でき、自治体と連携することでどういったサポートが受けられるかという、自立支援に向けたサービスとなります。学齢期のお子様に向けた「魔法のプロジェクト」は、2009年から東京大学先端研の中邑 賢龍教授と取り組んでおり、特別支援学校向けにICTを用いて学習を支援するプロジェクトです。読み書きに障がいのあるお子様に向けて、iPadで板書を撮影してサポートする方法など、現在約1,000件の事例があります。その次に課題となるのが就職期で、「なかなか障がいを持った方が長い時間働くのが難しい」という課題に対して、取り組み始めたのが「ショートタイムワーク」になります。

「ショートタイムワーク」について

「ショートタイムワーク」の仕組みについて、ソフトバンクでは主に精神発達障がいの方を対象としており、長時間働くのが難しい方が、週に20時間未満という短い時間から就業できるということで始めています。東京大学先端研の近藤 武夫准教授と一緒に2015年から検証を始め、2016年からソフトバンク内で「ショートタイムワーク」という制度を本格導入しました。

これが先ほどご紹介いただいた「ショートタイムテレワーク」のもともとの始まりの仕組みになります。近藤先生が提唱しているIDEAプロジェクトという超短時間雇用モデルがあり、1.職務を明確に定義する、2.超短時間から働くことができる、3.本質的業務以外は柔軟に配慮する、4.同じ職場でともに働く、をポイントに進めております。

「ショートタイムワーク」の業務のやり方は、業務を細分化してその一部を「できる人いますか?」という形でショートタイムスタッフを募集します。そして、ショートタイムスタッフは特性を生かして業務を遂行していただきます。依頼した担当者は、業務を仕分けして出すことで、自分の空いた時間を違う業務にあてることができ生産性が向上するというもので、2015年から検証を始めておりました。

考え方として、日本の雇用の場合だと新卒の方は会社に入社して初めてどこかの部署に配属されるという、人を雇用してから仕事がアサインされる形ですが、ショートタイムワークの場合は業務を決めて、この業務ができる人を雇用する仕組みになっているところがポイントです。昨今いわれているジョブ型という働き方とちょっと似通ったところがあるかと思います。

ソフトバンクでは、20人近いショートタイムスタッフが活躍しています。どういった業務をお願いしているかと言うと、例えば契約書のファイリング業務や郵送物の対応、アンケートの集計業務など。システム関連だと、システムサイトの監視とか、手話動画を作成しているチームでアノテーション作業をしていただいています。

特定スキルを活かした業務では、翻訳業務や文章を書くのが得意なスタッフには、社内のSNS発信の記事を書いてもらうようなことで働いていただいております。

社内事例

一人のスタッフの事例をお話しします。Aさんは大学を卒業後、研究生として大学に在籍していました。中々、働く機会がなかったところに、大学の就職支援課の担当の方とたまたまご縁があり、ショートタイムワークをご紹介いただいて、2020年3月から週に一日4時間という短い時間から働き始めました。週に20時間未満というところがポイントです。

当初は「自信も自尊心も全くない状況でした」とおっしゃっていましたが、その後、就労時間が少しずつ増えていき、最終的には週に3日、一日5時間という形で就労していただくようになりました。

受け入れ担当者の声として、アンケート分析という業務で募集をし、最初はそのアンケート分析業務だけを依頼していたが、だんだん業務の幅が広がっていき、アンケート分析や資料の作成、あとGAS(Google Apps Script)という、ちょっとプログラミングに近いようなところでフォーム作成もできるようになられました。

もともとGASはまったくご存知ではなかった状態だったのですが、少しレクチャーをするとどんどん吸収されて、今ではチームにいなくては困る存在となりました、というようなコメントを出されています。

そんな小さな成功体験がどんどん積み重なっていくことで働くことへの自信に繋がり、Aさんはこの春ショートタイムスタッフを卒業されて、一般企業の方に就職されることになりました。

Aさんの場合は、少しずつ時間を増やしていったのですが、短い時間で働く機会の創出というところを我々は目指しておりますので、約20人のショートタイムスタッフがいますが、就業時間はその方々で違います。週に1日4時間の方もいらっしゃれば、週に5日で3時間ずつ働く方もいらっしゃるということで、短い時間をポイントにすれば「働ける方というのは社会にたくさんいるよ」ということを常に気づかされました。

女性活躍推進の取り組み~「ショートタイムテレワーク」~

その短い時間に今度はテレワークを掛け合わせて、女性活躍推進というところで、2019年からショートタイムテレワーク「時間や場所に縛られない働き方」として取り組みを始めました。

考え方としては、「ショートタイムワーク」の短い時間の働き方にICTを掛け合わせて、テレワークで働くことを対象に、そういった育児や介護などなかなかフルタイムで働くのが難しいような方々が、「テレワークという働き方を選べば、通勤時間等の課題が解決できて働けますよね」という取り組みになります。

時間や場所に縛られない働き方のイメージとしては、先ほどの「ショートタイムワーク」と同じものになるのですが、日進市様からご案内があった、ビデオ通話で常時接続というところが特長です。

昨今、コロナでだいぶテレワークも進んできていますが、コミュニケーションの課題をよく耳にされるかと思います。ここでウェブカメラが常に繋がっている状態にすることで、たわいもない会話もできます。カメラが無い状態だと少しためらったりするのですが、向こうの様子が見えることで「今話しかけちゃまずいのかな」とか「今だったら大丈夫かな」と様子が分かったり、小さな質問とかもしやすくなります。コミュニケーションをとりやすい、それによって共に働くという環境を実現できている環境を作れます。

例えばイベントをやりますという時に、そのイベントを実施する中にたくさんの業務があるかと思いますが、チラシの作成や声掛け先リストの作成など、業務の一部を切り出して、ショートタイムテレワークで働く方にお願いをする。質問などは、iPadなどでウェブカメラが繋がった状態で相互に話ができるような環境を作ることで共に働くことを実現する。それが「ショートタイムテレワーク」になります。

横浜市との実証実験

まず、2019年に横浜市との実証実験を始めました。汐見台地区で、雇用先としてはトライアルということで、ソフトバンクのCSR内で6人のテレワーカーの雇用から始めました。

この働き方が本当に求められているかであったり、受け入れ側にメリットがあるかを検証する目的で、6人の方々に、曜日は火曜日と金曜日に統一し、9時半からの方もいらっしゃれば10時の方もいらっしゃるということで、週に2日でだいたい8時間ぐらいの勤務時間から始めました。

依頼業務としては、資料作成、データ分析、プログラミング、システム研修、広報のサポート、データ処理というところです。日進市様のお話にもありましたが、非常に皆様スキルを持った方々で、生保系の会社の総務等で内規改定の資料作成などをしていたという方や、ソフトバンクのプロダクト担当をされていたという方、エンジニアの方、あとお菓子メーカーのブランドマネージャーの方、理系の実験等をされていた方、というようなバックグランドを持つ方々でした。

働き始める際に、その6人の方々はブランクがあったということで、「もう一度働けるのだろうか」とちょっと躊躇されるところがあったのですが、この取り組みの説明会に参加いただいて、「こういった短い時間であれば、自分でもできるかもしれない」と一歩を踏み出していただきました。短い時間から共に働ける環境を通じて、だんだん一歩一歩踏み出し、働くことへの自信と次のキャリアを考えるようになったり、あと子育てや家事との両立がしやすいということで、日々の充実というメリットがありました。

テレワーカーの方からは、「ブランクがあって不安でしたが、無理なく社会参加ができて充実感、生活にメリハリが出る」、「お子さんに働いている姿を見せることができる」「コミュニケーションしやすい環境で感謝しています」といった声が聞かれました。

受け入れ担当者側は、ちょっと後回しにしていたような業務とかを切り出してお願いすることで、「手が回らない業務をやってもらって助かっている」とか、最初はどうしても手探りの状態から、だんだん慣れてくると依頼業務の幅も増えてきて「今ではいなくては困る存在」や、「想定以上のスキルの方が来てくれた」ということで、我々はいつも「眠れる人材の発掘」とご案内しているのですが、そういった方々が活躍できる場が広がっております。

一般企業・日進市様との取り組み

2020年3月に、ソフトバンクだからできたということでは困るので、一般企業にも広めていこうと、横浜市内の向洋電機土木という建設業の会社で、3人のテレワーカーの雇用を開始しました。

次に2021年の2月、福島県の須賀川市のエリア・マークスという出版業の会社にも、1人のテレワーカーを雇用していただきました。その方は、非常に小さいまだ一歳とか二歳にならないようなお子様を抱えてショートタイムテレワークを開始したのですが、育児も家事も絶対に犠牲にしたくないという強い思いがあっても「この短い時間であれば両立できるのでは?」と、お子様の寝ている時間とか、本当に隙間時間で業務に対応していただきました。エリア・マークスさんの方からも、「どんどん業務の幅、お願いできるものが広がってきています」というお話をいただいております。

そして、先ほどご紹介いただいた日進市との取り組みです。2021年の10月から、幸村建設株式会社で3人のテレワーカーの雇用を開始されたということで、中根様のお話にあった通り、業務依頼をされている社長さんからも「スキルの高い方々で本当に助かっています」というお声をいただいております。

横浜市から始まって日進市まで見てきましたが、我々はこの取り組みを日本の中の一つでも多くの企業にぜひ取り入れていただいて、この働き方がスタンダードになるようにとやっております。各会社で働いているテレワーカーの方からは、「この働き方、本当にどんどん広めてほしいです」、「私たちの周りにもこういった働き方をしたいっていう、一度キャリアを中断された方々ってたくさんいるのです」という声をいつも聞いておりますので、ぜひ本日ご参加の皆様もご興味がありましたら、お問い合わせいただければと思います。

企業側のメリットとしては、生産性が上がりますとか、優秀人材の獲得、あとテレワークという働き方でBCP対策になるというところと、企業価値の向上と書いていますがSDGsの目標達成ですね。ジェンダー平等という部分や働きがいという部分であったりといった達成のゴールに向かうのではないかと考えております。

ここまでご案内したように、障がい者の方の短い時間の社会参画推進と女性活躍推進というところに、我々ソフトバンクのCSRは取り組んできています。今後は、多様な方々が働ける仕組み・働き方ということで、シニアの元気な方々、がんで闘病されて仕事との両立が難しい方もいらっしゃるかと思うのですが、この短い時間の働き方であればそういった方々も過去のスキルを活かして充分に活躍していただけると考えております。こうした対象を広げて、どんどん広まるように取り組んでいきたいと思っております。社会参加のはじめの一歩を後押しすることができればと考えております。

「ショートタイムワークアライアンス」

その展開に向けて、「ショートタイムワークアライアンス」というネットワークを立ち上げています。

2018年2月から、「ショートタイムワーク」の考え方に賛同いただける団体様・法人様を募っているのですが、これからはそういった対象を広げて、「ショートタイムワーク」、短い時間の働き方に賛同いただける法人様・団体様にぜひ参加いただければと考えております。社会全体でこの働き方が広がればと考えています。

「ショートタイムワークアライアンス」の中では、情報の共有や事例の共有、アライアンスに参加いただいている団体様内での交流イベント、メルマガの発信などをやっております。地域や業界の垣根を越えてこの働き方を広められるようにということで取り組んでいますので、ぜひご参加を検討いただければと思います。

参加方法は2つあり、ご案内させていただいた短い時間の働き方に「その働き方いいじゃない」と賛同いただける場合は、右側の賛同法人の主旨に賛同という形があります。参加にあたってはもちろん費用等は発生しないので、サイトにあります申し込みのフォームからお申し込みいただければと思います。左側の実施法人は、主旨に賛同いただいた上で、この短い時間で働くスタッフを1名雇用してくださいということで実施法人の定義としております。

おかげさまで、2018年から2022年1月までで210の法人に参加いただいております。実施法人は上の約20社ですが、まだまだその働き方を実際に取り入れていただく企業・団体様は少ないのが現状です。我々もまだまだ頑張っていかないといけないなと思うところですが、まずは賛同の参加からご検討いただければと思いますので、よろしくお願いします。

年に2回ほどイベントをやっておりまして、これはまだコロナの前だったため弊社の方に皆様お越しいただいて、近藤准教授から超短時間雇用のお話をいただいたりですとか、このショートタイムワークを取り入れていただいている実施法人様から事例のお話をいただいたりなどをしていました。

インターネットで、「ショートタイムワークアライアンス」と検索いただけると、申し込みのフォームが出てきます。もしくはこちらのQRコードを読み取っていただき、ぜひご検討ください。

誰もが働きやすい環境づくりを目指して推進していきますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。