開催報告 ODS第8回研究会 開催報告(後編)
「自治体のDX推進に向けた意識改革と人材育成~自治体職員のDXリテラシーをどう高めていくか~」

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構(Organization of SDGs Digital Society、略称:ODS)は7月22日、第8回研究会「自治体のDX推進に向けた意識改革と人材育成~自治体職員のDXリテラシーをどう高めていくか~」をオンラインとリアルのハイブリッドで開催しました。後編では独立行政法人情報処理推進機構(IPA)社会基盤センター 人材プラットフォーム部の山川宏樹氏による「経済産業省のDXリテラシー標準とマナビDXについて」と、日本電気株式会社 AI・アナリティクス事業統括部人材育成G シニアDXラーニングコンサルタントの山崎明子氏による「自治体におすすめ!DX人材育成プログラム」の2講演について、ご紹介します。

「経済産業省のDXリテラシー標準とマナビDXについて」
独立行政法人情報処理推進機構 社会基盤センター 人材プラットフォーム部
スキルトランスフォーメーショングループ
山川 宏樹 様

 

独立行政法人情報処理推進機構の山川と申します。
本日は、経済産業省のDXリテラシー標準とマナビDXの2つの施策を中心にIPAが取り組んでいるデジタルリテラシー促進への取組みについて、お話させていただきます。

 

 

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)について

はじめに情報処理推進機構 (IPA)についてご説明します。
経済産業省所管の独立行政法人で、IT社会の潮流や技術動向をとらえ、社会課題の解決や産業の発展につながる指針を示し、セキュリティ対策の強化やIT人材を育成するための活動に取り組んでおります。セキュリティ情報の発信、中核人材育成プログラム、情報処理技術者試験などを実施しています。私の所属する社会基盤センターは、全体の潮流を把握し、指針やガイドラインを作成する、IPAの言わば土台としての活動をしています 。

日本のデジタル競争力低迷の背景

今年の5月にバージョン2.0が公開され、話題を呼んだ経済産業省の「人材版伊藤レポート」では、人材は「管理」対象ではなく、「資本」として、最大限に活用するため投資しなければいけない、と述べられています。人材投資をしなければ資本の価値は下がりますが、諸外国と比べて日本の人材投資の比率は低く、また、個人も学習や自己啓発を行っていない人の割合が群を抜いて大きいという結果となっております。

IMDが行っている「世界デジタル競争力ランキング2021」の中で、日本のデジタルスキルは、64カ国中62位と下位に位置する結果が出ています。由々しき問題です。【図1】

【図1】世界のデジタル競争力ランキングで、日本はデジタルスキルが62位と下位に

また、昨年IPAが発行したDX白書2021では、日本企業の76%がDX人材不足を感じている一方で、社員全体に学び直しを実施しているのはわずか8%という厳しい現実が浮き彫りになりました。これらの人材投資不足、デジタル競争力の低迷を背景として、諸施策が生まれています。

デジタルリテラシー促進の取組み

施策の1つが、デジタル人材育成政策です。デジタル人材育成プラットフォームの要素である「マナビDX」と「DXリテラシー標準」の2つの施策をご紹介します。

【図2】の上部にあるよう「全ての国民が、相応のデジタル知識・能力を習得する必要がある」と記されています。

図の左側の三角形は、IT製品・サービスを提供する人材を表現しています。このIT人材には以前からの情報処理技術者試験をはじめとした様々な取組みが進められてきました。しかし、図の右側の三角形で示されている「デジタル技術を活用する」人材への対応は、あまり行われてはおりませんでした。
「DXリテラシー標準」は、全てのビジネスパーソンを対象にしたデジタルスキルのスタンダードです。

また、デジタルリテラシーを身に付けた前提で、より専門的な、DXを推進する人材向け の標準も整備しています。

【図2】デジタル社会における人材像

IPAにおけるデジタルリテラシー向上推進活動

IPAのデジタルリテラシー向上推進活動について、ご説明します【図3】。施策の中で、左から[1]調査、[2]デジタル人材育成プラットフォーム、[3]スキル検定、[4]組織や個人に対するトランスフォーメーションを挙げています。

[1]組織・人材・スキル変革に関する調査の結果を、[2]デジタル人材育成プラットフォームなどの施策にも活用しています。また、最近の調査結果の中で目を引くようになってきたテーマが、「学び」です。組織が講座や研修を提供すればいい、個人は与えられたものをこなせばいい、ということではなく、自ら学んでいく文化や風土を組織が作る、個人もチャレンジすることが重要です。私たちは、それをラーニングカルチャー・グロースマインドセットの醸成と表現し、取組みの目標として掲げています。

【図3】IPAが取組むデジタルリテラシー向上推進活動

組織にデジタルを知らない人が多いとDX推進のマイナスに

デジタル社会では、全てのビジネスパーソンはデジタルリテラシーを持っている ことが必要とされていますが、会社や自治体などの組織の中で、人材のリテラシーレベルがどう影響しているのでしょうか。

デジタルリテラシー協議会(【図3】[3])でもご一緒させていただいており、IPAの専門委員でもある(株)ディジタルグロースアカデミア様の方から伺った話ですが「デジタル人材の役割」をご説明された際の話とのことです。職種/役割に応じてデジタルの「作り方」や「活かし方」を身につけることになりますから、サービスを作るのは「作り方」のスキルを持ったDXを推進する人材が担うでしょう。従来の情報システムであれば、「作る人」に任せてしまっていて、他の方々はそれを与えられて使っていました。しかし、これからはデジタルの「活かし方」が求められ、全員が使えるようにならないと事業は拡大しません。

現場の社員が使いこなせれば、もちろん浮いた時間で別の仕事をしたり、より良いものを考え出したり…と、新たな価値を生み出すことができます。経営層も戦略や方針などの経営判断がデジタルに基づいたものでないと、今の社会では通用しなくなります。つまり、全員がデジタルを理解していることが前提なので、やはりデジタルやデータ、ITを身近にしていかなければならないと思います。

さらに、全体がデジタルを知っていること、と申し上げましたが、一方で知らない人が組織にいる場合には負に作用するでしょう。組織の中の人材を、①(デジタルを)作れる、②活かせる、③使える、④理解している、⑤知らないに分けたとします。①作れる②活かせるは相乗効果があると考えられますので、貢献度合いは人数の乗算になりますよね。③使える人材は(①②の道筋に沿って使えるので)そのまま加算、④理解している人材は①②③に対しプラスにもマイナスにも影響を与えません。一方で、⑤知らない人材は抵抗勢力になったり、組織のデジタル変革の阻害要因になったりして、足を引っ張りますのでマイナスになるでしょう。

例えば100人の組織でデジタルを①作れる人材が10人、一方⑤知らない人材が90人いたとします。②活かせる人材、③使える人材が0人であると、作れる人材がいても活かす術がなく、⑤知らない人材が足を引っ張るマイナス要因となってしまって「マイナス90」と評価できます。DXを推進する人材がスキルを発揮しても、活かせる人がおらず、知らない人しかいないと大幅なマイナスとなりますね。

一方、①作れる人材が5人、②活かせる人材が5人、⑤知らない人材が90人とすると、①②を乗じて⑤をマイナスし、差引「マイナス65」と、マイナス幅が減少していきます。ここでさらに⑤知らない人材90人のうち、45人が④理解している人材になると、「マイナス20」、全員が④理解している人材になれば「プラス25」と、大きくプラスに転じます。さらに②活かせる人材が増えれば、非常に大きなプラスになります。

このように、デジタルを知らない人材をそのままにしたり、知らないから人任せにすることはやめた方がいいですね。知らないというだけで、組織の中でDX推進のマイナスとなってしまうため、すべてのビジネスパーソンが、デジタルリテラシーを身に付ける必要があるのです。

DXリテラシー標準とマナビDXについて

【図3】[2]デジタル人材育成プラットフォーム図内「DXリテラシー標準 」と「マナビDX」について、ご紹介します。DXリテラシー標準は、働き手一人ひとりがDXリテラシーを身に付けるということで変革に向けて進んでいくというねらいがあります。背景には、社会全体のDXが加速していることや、人生100年時代となり学び続ける重要性が高まっていることなどが挙げられます。

DXリテラシー標準は、Why、What、How の3つの柱と1つの土台から構成されています【図4】。背景となる社会・環境の変化とDXの重要性がWhy、DXを推進するAIなどのデジタル技術やデータがWhat、活用事例を知り留意点をふまえて活用するのがHowです。

また、土台となるマインド・スタンスが非常に重要です。常識にとらわれない発想や変化に適応できる意識・姿勢など、変化する社会の中で新たな価値を生み出すマインド・スタンスが、DXでは必要となります。DXリテラシー標準に則り、体系的に学んでいくことで、DXを自分事として推進に向けて行動できるようになります。先ほども申し上げましたが、DXを推進する人材のみではなく、全員がDXに取組むことで推進のスピードが上がっていきます。

【図4】DXリテラシー標準に必要な3つの柱とマインド・スタンス

最後にマナビDXに ついてご紹介します。マナビDXは、デジタルスキルを学ぶ講座を検索することができるポータルサイトです【図5】。

【図5】「マナビDX」ポータルサイトでは、DXリテラシー標準に沿って好きな講座を探すことができる

受講の申し込みは、マナビDXからリンクされた教育研修事業者のサイトで行っていただきます。検索画面では、DXリテラシー標準による講座の絞り込みができ、学習したいスキル、DXリテラシーのカテゴリに紐づけられた講座を選ぶことができます。

山川宏樹様のご講演スライドをダウンロード

 

「自治体におすすめ!DX人材育成プログラム」
日本電気株式会社 AI・アナリティクス事業統括部人材育成G
シニアDXラーニングコンサルタント
山崎 明子 様

 

NECシニアDXラーニングコンサルタントの山崎です。日頃より企業や自治体のDX人材育成を全力でご支援しています。本日は、経済産業省「マナビDX」に掲載されているプログラムの一例として「NECアカデミー for DX」を少しご紹介させていただいた後、自治体の皆さま向け階層別人材育成プログラムと人材育成パッケージのお話をさせていただきます。

 

NECアカデミー for DXとDX人材育成の必要性について

NECアカデミー for DXについて、ご説明します。NECでは、DX人材育成向けに200以上のコースが選べるNECアカデミー for DXを提供しています。このサービスを通じて、NECが今まで培ってきたDX人材育成メソドロジーを社会に還元していき、日本のデジタルトランスフォーメーションを推進するお手伝いをすることが目標です。DXの人材戦略の策定や実践的なDX人材育成のお手伝い、そして、継続的に文化として浸透していただくよう、ワンストップのサービスを提供しています。

NECはこれまで、IT専門人材の育成を得意としていました。しかし、わが国としてこれから重要なのことは、いわゆるITの専門会社やIT部門ではない、一般的な事業会社や自治体における一般部署の方々の育成です。こういった方々を重点的に育成していかなければ、日本のDX人材育成はさらに遅れ、危機的状況となります。

DX実現に向けて自治体職員に求められる人材要件

そこで私たちは、自治体の皆さま向けに求められるトレーニングの準備を進めています。自治体のDX推進では、特定の部門や職員の人だけが頑張っても駄目で、組織全体として取り組んでいく必要があります。

そのうえで、一般職員を含む全職員を対象とするもの、DX推進人材を対象とするもの、首長やCIOなど自治体幹部を対象とするもの、3つの階層に分けています【図6】。階層それぞれに求められる人材要件があり、トレーニングが必要です。

【図8】DX実現に向けて自治体職員に求められる人材要件

3つの階層別自治体向け人材育成プログラム

3つの階層別自治体向け人材育成プログラムについて、ご紹介します。一般職員、全職員には、DX推進を人ごとではなく自分ごと化し、ポジティブに受け止める。それから、実行する素養を醸成するプログラムが必要です。DXマインド・スタンスの研修では、「DXがそもそも何か分からない、変える必要があるのか」という状態から、最終的にDXを自分ごと化・ポジティブ化できるよう変化させることがプログラムのゴールとなっています【図7】。

また、DXリテラシー標準に対応していて、「DXリテラシー概説」、「AIリテラシー教育」を含む3つのコースを受けることですべてに対応できます。

【図7】一般職員向け DXマインド・スタンス研修

DX推進人材向けの2つのプログラムをご紹介します。1つ目の課題解決コースは、データを活用したプロジェクト企画の進め方について理解し、企画や提案ができるようになるというものです【図8】。

参加者は4週間のプログラムの中で、自治体における課題を想定しながら、実践的に学びます。最終的に企画発表を行い、講師であるNECの最先端のデータサイエンティストによるアドバイスを受けることができます。

【図8】DX推進人材向け 課題解決コース(DX・データ活用企画研修)

2つ目の政策企画コースは、自治体のデジタルトランスフォーメーションに求められる行動様式、マインドセットを理解し、DXに向けた課題解決の流れを体験することがゴールです【図9】。DX推進リーダーに必要な4つのスキルが習得でき、さまざまな自治体DX、行政DXの事例も学びながら、成長の実感を持って受講できるプログラムとなっています。

【図9】DX推進人材向け 政策企画コース (自治体DX推進リーダー研修)

最後に自治体幹部向けのプログラムとして、CIOを対象としたワークショップをご紹介します【図10】。できればCIOやCIO補佐官の方が側近の方々と受けていただきたいと考えています。

例えば、組織でDX推進の必然性が理解されず、浸透しない、いくら自ら旗を振って行いましょうと言っても、付いてきてくれない、といったケースがあります。そのような場合に、DX推進の体制づくりとして、一緒に受講することで、側近の方を巻き込んだり、同じ方向を向くといった効果が期待できます。

【図10】自治体幹部向け DXワークショップ

自治体向け人材育成パック

3階層別のプログラムについてご紹介をしましたが、コースが多く迷ってしまう、という声をいただき、自治体さま向けのDX人材育成パックをご用意しました【図11】。一般職員向けの「まずはここからプラン」。それから、「推進者応援プラン」は、プラスして、DX推進人材向けの2つのコースのどちらかを選ぶ形となっています。「まるっと3階層プラン」は、自治体幹部対象を含む、すべての階層のプランに対応しています。

非常にシンプルなプランとなっていますが、もし迷われたらぜひ私どもにご相談ください。さまざまなプランを直接ご提案します。

【図11】自治体様向けDX人材育成パック

最後に、NECと自治体の関りについて、DX人材育成以外の取組みもお話ししたいと思います。私たちは、DX向けの各プログラムをご用意していますが、教育を受けることがゴールではなく、あくまで自治体の皆さまのDX実現がゴールだと思っています。

NECでは、2021年11月に兵庫県 加古川市と地域共創に関する包括連携を結び、持続可能な街づくり・スマートシティ推進などの取組みを共同で進めており、自治体の皆さまのDX実現と継続的なアップデートに関する支援をすることが可能です。

さまざまなプログラムと合わせて、気に入っていただけたらぜひ、ご活用いただければと思います。

山崎明子様のご講演スライドをダウンロード

(取材・文 株式会社アネティ)