開催レポート

レポート|伊那ハッカソン3rd

伊那ハッカソンに参加してきました、とても有意義な時間を過ごせました。

伊那市は、1997年にADSL技術の実用化を目指して国内初の導入実験を実施した地です。実験から20周年の節目を迎え、新たに次世代無線通信規格LPWAの一つであるLoRaWANを活用した「次世代の伊那市の姿とその価値」を提言し、地域一体となり日本で最大の「IoTテストベッドシティ」となるべく、推進活動を行っています。
伊那市は二つのアルプスに囲まれたとても豊かな自然と食(高遠そば・ローメン・ソースカツ丼など)が魅力です。
農業・工業ともに盛んで、特色のある製造業も多い市であります。
また最近は、趣のある商店街の建物を生かしたリノベーションも盛んで、新たな店も増えてきています。

伊那市内に SORACOM LoRaWAN 共有ゲートウェイを設置。参加者はLoRaモジュールと ARM mbed プラットフォーム、その他豊富な開発アプリケーションを使用することで、様々なセンシングデバイスを活用したサービスを簡易に開発できるようになり、これを用いてプロトタイプを作成します。

参加者は2018年10月20日(土)21日(日)の2日間の日程で、現地の実情に触れながらアイデアを出し合い、実際に動作するシステムを構築することを目指します。また、ハッカソンの成果は、伊那市での実用化を目指した支援も行います。生涯学習センター「いなっせ」5F(住所:長野県伊那市荒井3500-1)にて実施されました。

写真1:フィールドワークでの風景

写真1:フィールドワークでの風景

6月に開催しました第1回では、伊那市の農業・危機管理・林業における課題解決のアイデアソンを実施しました。
そして、8月に開催の第2回では、第1回で出てきたアイデアの実装にチャレンジしました。
これまでのハッカソンでは、猟友会の見回りを軽減する「くくり罠(わな)センサー」を開発し、実験している。8月の前回は8チーム52人が参加、居酒屋の店舗状況がリアルタイムで分かる「伊那で飲み倒れ大作戦」や、買い物に使うタクシーの効率的利用などが提案されました。
3回目のテーマは「防災・農業・福祉・観光」
今回のハッカソンでは、LoRaWANを活用し、現場の方のインタビューや観光地のフィールドワークを行い、株式会社ウフルの技術メンターのもと、テーマに沿ったプロトタイプを作りました。

いまや、日本全国どこも抱える課題のナンバーワンといっても過言ではないテーマで広い範囲となっており、参加したメンバーは頭を悩ましていました。
IoTやクラウドのエンジニアや地方創生及びIoTに興味、関心をお持ちのマーケター・コンサルタント・デザイナー、行政関係者や学生など様々な方の参加となりました。
長野県や伊那市内の方はもちろんのこと、長野県外の方々、女性のご参加となりました。

審査基準は、以下の5つの基準を設け、それぞれについて4段階で複数の審査員が評価し、結果を合計して入賞を決定されました。
・デモの完成度(発表時に動くものができているかどうか)
・実現性と実装性(実際に実現可能か、技術は既にあるか)
・デザイン性(洗練されたデザインか、訴求力があるか)
・事業性(ビジネスとしての可能性はあるか)
・テーマ性(テーマに沿った価値を提供できているかどうか)

第3回は同市の「いなっせ」で行われた。35人の参加者は6グループに分かれて、防災、農業、福祉、観光をテーマに地域課題を探り、センサーや通信機器を駆使したシステムを開発した。

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写真2:検討している風景

優勝は、居場所を感知する「伊那い伊那いヘルメット」を使って街中を逃走するゲームの提案で、伊那市に若者を呼び寄せ、観光の活性化につなげるアイデアが評価された。

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写真3:「伊那い伊那いヘルメット」

2位は、農薬散布の課題解決のために液体を感知するセンサーや風力センサーを駆使して、農薬がエリア外に飛散するのを感知して、農薬飛散をさせない提案となった。実際に果樹園栽培に従事しているメンバーの声からの課題を解決するシステムを構築していた。

3位は、ハッカソンに参加するメンバーでホテルを探すことが大変だとの声からアイデアを得た案で伊那市にあるホテルや民宿の空き情報がわかるシステムとなった。ホテルや民宿の方が高齢であることでのインターネットなどへの不得手のことを考慮した簡単な操作としている。居酒屋の店舗状況がリアルタイムで分かる「伊那で飲み倒れ大作戦」との連携ができるとのことも評価された。

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写真4:石仏総選挙

ソフトバンク賞として、高遠の観光を広げる案として、高遠の寺院にある33体の観音様の石仏の総選挙を行い、イケメンの石仏を投票させるアイデアで観光客にアピールすることが評価された。
既設の有線ネットワークにローラワンの技術を付加することで創造されたアイデアは多くが実用的で期待も大きい。いなあいネットの白鳥薫組合長は「県内には有線放送が21団体あるが、伊那市で成功すれば他の地域にも波及させていくことができ、新しい事業として成り立つ」と話されています。

写真5:参加メンバー全員

従来のハッカソンがメーカーの新しいセンサーや商品を使ったイベント色が高いように感じていました。伊那ハッカソンは、地域の現場にある課題を拾い上げていることが素晴らしいと感じます。2日間の短い時間でプロトタイプとしても、実際に稼働する製品を作ることが特色であると思います。
初めてあったメンバーと意見をぶつけて、年齢の差を超えた密な関係を作ることもできますし、いい経験になります。

伊那ハッカソンでは、単なるイベントでなく、ここで生まれた優れた内容のものには、商用化に向けてサポートを行う事もあり、猟友会の見回りを軽減する「くくり罠(わな)センサー」の商品化が進んでいます。
このような、地方自治体の主催される地域ハッカソンは、現場で困っていることを解決できる製品のアイデアや企画の種が作られる素晴らしい取り組みだと思います。