開催レポート

開催報告 ODS第6回研究会 特別講演
「地方創生に向けたSDGsの推進について」(内閣府地方創生推進事務局)

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構は、さる5月13日に、第6回研究会「SDGsによる持続可能な地域の発展を考える~政府の考える地方創生SDGsとSDGs未来都市選定自治体の取組事例~」を開催しました。この研究会では4名の方に講演をいただきました。本稿では、特別講演としてご登壇いただきました 内閣府 地方創生推進事務局 参事官補佐 田中一成様 のご講演内容をご紹介します。

 

「地方創生に向けたSDGsの推進について」
内閣府 地方創生推進事務局 参事官補佐 田中 一成 様

SDGsに関する日本政府の取組

最初にSDGsの実施に関する日本政府の取組についてお話ししたいと思います。

SDGs達成に向けて、日本政府では2016年の5月に内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置し、一丸となってSDGsの推進に取り組んでいるところです。

2016年の12月には、中長期戦略である「SDGs実施指針」を策定し、この指針に基づいて、政府の具体的な取組を加速させるため、毎年年末に全省庁による施策を盛り込んだ「SDGsアクションプラン」を策定しています。直近では2021年12月に「アクションプラン2022」を策定しました。

次に、SDGsの達成に向けた日本政府の取組について、ご説明します。

 

先ほど申し上げた「SDGs実施指針」では、SDGsの推進にあたって広範なステークホルダーが関わって、みんなで連携して取り組んでいくということが非常に必要になってきます。指針は我が国がSDGsの達成に向けた優先課題や今後の推進体制などの基本的な計画を定めたものですが、ここでご紹介したいのは、「地域活性化」が優先課題のひとつとして明記されたことです。

資料中央の「Prosperity(プロスペリティ)繁栄」というところに赤字で「地域活性化」と明記されています。また、SDGs達成には、地方公共団体に期待される役割があるということも明記されています。

このようにSDGsの推進に向けた体制づくりや、各自治体で策定されるまちづくりの総合計画等にSDGsの考え方を反映していただくこと、そして、官民連携の取組を通じて、地域の課題を解決していくということが盛り込まれています。

直近の「アクションプラン2022」についても簡単にご紹介したいと思います。

SDGsは、17のゴールがありますが、特に注力すべき8つの優先課題というものがここにございます。先ほど申し上げた「地域活性化」というのは、8つの優先課題のうちの3番目「Prosperity繁栄」に位置づけられています。

地方創生に対するSDGsの位置づけ

次に、地方創生におけるSDGsの位置づけについて、ご紹介させていただきます。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、地方創生の目指す方針を定めたものですが、2020年度を初年度として、向こう5年間の施策の方向性などを取りまとめた、第2期の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の「横断的な目標」(資料の右端)の中で、地方創生SDGsというものが位置づけられています。

この「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、2024年度までにSDGsの達成に向けた取組を行っている、地方公共団体の割合を60%にするというKPIを掲げています。
このKPI達成に向けて、内閣府では、特に3つの施策に注力しており、1つは地方公共団体によるSDGs達成のためのモデル事例の形成、もう一つは官民連携のプラットフォームを通じた民間参画の促進、あともう一つは地方創生SDGs金融の推進というものになります。それぞれ2024年までの KPI を設定し、啓発に取り組んでいます。

地方創生SDGsは、まだ歴史が浅く、認知度も非常に低かったのですが、年々、取組への関心が高まってきており、現在は52.1%の自治体がSDGsに取り組んでいると回答しています。この割合を60%にするのが2024年度までの目標です。

ここまで、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」についてご説明しましたが、もう一つ昨年の2021年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針」というものがあります。

この中には、SDGsを原動力とした地方創生として、「脱炭素」を重要視する考え方が盛り込まれています。もともとSDGsは、非常に環境面を重視しているのですが、昨年から政府の基本方針の中にも「脱炭素」という考え方が明確に盛り込まれました。

地方創生SDGs推進の意義とSDGs未来都市の選定

次に、地方創生SDGsを推進する政策的な意義について、ご紹介したいと思います。

SDGsは世界共通のグローバルな取組ですが、地方公共団体におけるSDGsの達成に向けた取組は、中長期を見通した持続可能なまちづくりや地域の活性化といった、地方創生の政策の実現に資するものです。

また、それらの取組を推進するにあたっては、将来この地域のあるべき姿を見据えて、そこからさかのぼって現在何をすべきかを考えるバックキャスティングという考え方が非常に重要だと考えています。それを実現していくためには、課題を解決するための体制づくり、各種の計画・戦略への反映、多様なステークホルダーとの連携等が非常に重要となってきます。
そして、地域課題を解決するための施策を、資料の中央にある「経済」「社会」「環境」の三つの分野を統合的に取込むSDGsの理念に沿って進めることで、相乗効果を図り、持続可能なまちづくりにつなげていくことが、非常に大事だと考えています。
そういった取組を通じて、地方の共通の悩みである人口減少や地域経済の縮小といったことを克服すること、まち・ひと・しごとの創生と好循環を確立することを、目標にしております。

先ほど、内閣府地方創生推進事務局で、地方創生SDGsについて、主に3つの取組をしていると申し上げましたが、それがどのようなものか、これからご説明いたします。

まず、地方公共団体によるSDGsの取組を推進していくためには、モデルとなるような先進事例を作っていくことと、それを普及展開していくことが必要になります。内閣府では2018年度からこういった地域におけるSDGsの達成に向けた取組を公募し、すぐれた取組を提案する都市を「SDGs未来都市」として、毎年30都市程度、選定しています。今年度も今まさに選定中で、もうすぐ発表になります。

「SDGs未来都市」のうち特に先導的な事業については、資料の中央右の通り、「SDGsモデル事業」として選定し、補助金を交付して支援しています。2021年度までに累計124都市を未来都市として選定していまして、そのうち40事業が「SDGsモデル事業」として選定されています。「SDGs未来都市」に選定された都市には未来都市計画を策定していただいて、2030年度までに都市が目指すあるべき姿、それを実現するための施策を推進し、内閣府では有識者や関係省庁を横断したタスクフォースを通して、計画策定の支援や、進捗評価といった助言をするなどのサポートをしています。

また、先ほど「地方創生SDGsの推進」のところで申し上げた「経済・社会・環境」の考え方は、図にするとこのような形になります。

SDGsは、17の目標があるわけですが、この取組を通じて、地方の活性化に資するようなモデルをどんどん広げていきたいと思いますので、何かこういうことをやってみたいといったものがあったら、お気軽に内閣府にご相談いただければと思います。

そして、こちらは、昨年2021年度の「SDGs未来都市」の発表と選定証授与式をオンラインで行ったときの様子です。簡単にご紹介しておきます。

こちらは過去4年間の選定の実績です。ここに書いてある自治体全部が未来都市で、黄色いところがモデル事業になっているところです。

それを地図でプロットしたのがこちらですが、北は北海道から南は沖縄まで、全国的に関心を持っていただいており、大変ありがたいことだと思っています。こういった取組をどんどん広げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

次に、昨年度から始まった「広域連携SDGsモデル事業」という取組についてもご紹介させていただきます。

今までご説明してきたモデル事業は、単一の自治体を対象にしたものでしたが、中小規模の地方の取組を進めていくことも課題であり、そうなるとマンパワーや財源の問題もあり、単独で進めていくのは厳しくなります。そこで、複数の自治体が連携し、そのスケールメリットや相互補完によって、実行可能性を高めていくという取組の支援も始めたところです。
実は、第1回目の公募が2022年3月の終わりに完了し、現在、選定プロセスを進めているところです。

また、SDGsに取り組みたいけれど、何をやったらいいかわからない、という地方公共団体向けに個別のオンライン相談会も実施しています。「基礎的な内容を知りたい」というベーシックな相談から、具体的に「未来都市の選定に向けて、どういう提案したらいいか」という相談に応じるなど、いろいろなご相談を受け付けています。

これまでご説明した通り、内閣府ではSDGs未来都市の選定を通してモデル事業を形成するなど、地方公共団体によるSDGsを進めていくことを目指していますので、自治体の皆様には、地域のSDGs達成に向けた取組にご関心があれば、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

次に、「官民連携プラットフォーム」という官民連携の推進の取組についてご紹介します。

SDGsの国内実施を進めるためには、自治体だけではなく、民間企業や専門性を持ったNGO、大学など、いろいろなステークホルダーとの連携が非常に大事だと考えています。そこで、内閣府ではSDGsの官民連携を進めていくために、2018年に官民連携プラットフォームというものを設置しました。資料右下の会員数の通り、これだけ多くの団体にご参加いただいています。

このプラットフォームでは、会員同士のマッチングの支援をするほか、分科会の開催や、普及促進活動といったことをやっています。多くの自治体に参加いただいており、地域別の自治体の加入状況についても、年々上がっています。

現在、自治体と民間合わせて約6,450団体にご参加いただいています。

最後に、地方創生のSDGs金融について、ご説明します。

地方創生SDGs金融というのは、地域におけるSDGsの達成や地域課題の解決に取り組む地域事業者を、地方公共団体と地域の金融機関が連携して支援することで、地域に資金を還流して再投資を生み出す、自律的好循環といった形成を促進する取組になります。

内閣府では、2020年10月にガイドラインを作り、地域事業者のSDGs達成に向けた取組の見える化を促進して、その自治体が金融機関と連携して、支援していく仕組みの拡大を目指しています。
昨年2021年11月には、自治体と金融機関が連携した地域事業者への優れた支援に対して、地方創生担当大臣から表彰するといった制度を創設しました。この施策のKPIとしては、先程の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」にて、地方創生SDGs金融に取り組む自治体を100にしていくことを掲げ、現在、進めているところです。

今後、人口減少していく社会において、将来にわたって成長力を確保し、安心して暮らせるような持続的なまちづくりを図っていくためには、市民の方、自治体の方、企業、金融機関が連携して地域課題を解決していくこと、地域の活性化に向けて取り組んでいくことが重要になります。

特に行政機関である自治体には、SDGsの理念を取り入れて将来のビジョンを作り、市民・地域事業者・金融機関がパートナーシップを組む官民連携のプロジェクトを積極的に進めて、いろいろなステークホルダーが一体となったまちづくりを推進していただくことを非常に期待しています。

そのために、内閣府としても皆様に寄り添って、お手伝いを精一杯していければと思いますので、何かございましたら、お気軽にお問合せいただければと思います。