開催レポート

開催報告 ODS第6回研究会 事例紹介①
「持続可能な地域社会の実現に向けて~SDGs未来都市しもかわ~」(北海道下川町)

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構(ODS)は、さる5月13日に、第6回研究会「SDGsによる持続可能な地域の発展を考える~政府の考える地方創生SDGsとSDGs未来都市選定自治体の取組事例~」を開催しました。この研究会では4名の方に講演をいただきました。
本稿では、事例紹介①としてご登壇いただきました北海道下川町政策推進課SDGs推進戦略室 室長 亀田慎司様のご講演内容をご紹介します。

「持続可能な地域社会の実現に向けて~SDGs未来都市しもかわ~」
北海道下川町 政策推進課SDGs推進戦略室 室長 亀田 慎司 様


下川町政策推進課の亀田です。本日は貴重なお時間をいただき、関係者の皆様方に厚くお礼を申し上げます。
早速ですが、私の方からは下川町のSDGsをまちづくりのツールとして、取り入れている取組みについてご紹介させていただきます。

下川町概要とSDGsへの取組み

まず、町の概要について、お話ししたいと思います。

人口が3,000人ほどの小規模過疎地域で、町の面積が東京23区と同じ程度です。そのうち、面積の約9割を森林が占める自然豊かな地域です。気候は北海道の内陸性気候ということもあり、夏はプラスの30度以上、昨年7月には下川町観測史上最も熱い37.3度を記録しています。逆に冬はマイナス30度で、積雪も多いということで、寒暖の差が国内でも特に大きい地域です。

資料右上に地図がありますが、北海道の北部で道北といわれる地域に下川町は存在しています。スキージャンプが大変盛んな地域で、レジェンドの葛西紀明選手が下川町の出身です。北京オリンピックでも伊東大貴選手と女子の伊藤有希選手、2人のオリンピック選手を輩出しています。

続いて、下川町の歴史について、ご説明したいと思います。

下川町は120年という浅い歴史ですが、1901年、岐阜県の旧高鷲村、現在の郡上市から開拓団の方が入植されたことが歴史の始まりです。

以降、農業と林業、鉱業で栄え、最盛期の人口が1960年に15000人を超えたこともありましたが、その後、基幹産業の林業において、木材の自由化により外国から安い輸入材が入ってきたことで、下川町の林業は大きく衰退していきます。また、環境規制強化により、下川町に2つあった鉱山も衰退していく状況になりました。

その後、鉱山の休山や、JR名寄本線という鉄道の廃線によって人口減少が急速に進み、1980年の国勢調査では人口減少率が北海道1位となり、北海道で一番人口が減った町、全国でも4番目に人口が減った町という状況になりました。

そこで、我々の先輩方に「このまま人口減少が急速に進むと地域が消滅してしまう」という危機感が芽生えて、様々な挑戦、ふるさと運動に取り組んでいます。資料左下の「万里長城」は、下川町は観光資源が乏しいこともあり、当時農地造成の際に出た大きな石・不要な石を、町民の方、そして、町外の方が自ら積んで、手作り型観光資源を作り上げています。また、氷の中にロウソクを灯す「アイスキャンドル」という取組みもしています。「アイスキャンドルミュージアム」というイベントを毎年2月に開催し、冬の寒さを逆手にとって楽しむ取組みをしています。

このように様々なふるさと運動に挑戦をし、徐々に人口減少の緩和が見られるようになり、国の方から「環境モデル都市」、「環境未来都市」そして「SDGs未来都市」の選定をいただきながら、まちづくりを進めているところです。

続きまして、持続可能な地域社会の実現に向けてお話ししたいと思います。

こちらは、経済・社会・環境の3側面の調和による持続可能な地域づくりということで、役場職員・町民・学識経験者といった方々で構成される産業クラスター研究会によって、下川町の将来ビジョンを描いたのがきっかけで、以来、3側面の取組みを進めています。

また2007年には、町の憲法でもある自治基本条例の前文に「持続可能な地域社会の実現を目指す」ことを位置づけています。そして2008年に「環境モデル都市」、2011年には「環境未来都市」と、横浜市等と共に下川町も選定を受けています。

まちづくりのコンセプトとしては、実は2001年のビジョンが出来あがった約20年前から、3側面の価値創造、統合的解決を掲げ、現在潮流となっているSDGsの取組みを進めてきています。それぞれ、経済面では基幹産業である森林総合産業の構築、社会面ではこれから到来する超高齢化社会への対応と、環境面ではエネルギーの自給と低炭素化(現在では脱炭素化)という、3側面をともに進めながらまちづくりをしています。

続いて、循環型森林経営についてご説明します。

資料右に図がありますが、現在、下川町には町有林が約4700ヘクタールあり、切ったら必ず植えるということを繰り返す循環型森林経営を進めています。この循環型森林経営を繰り返すことによって、原木の安定供給と安定的な雇用確保を図ることができます。

取組みのきっかけは、1953年(昭和28年)基本財産の造成と雇用対策のために、当時の町の財政規模が約1億円のところ9000万円で国有林を取得したところから始まりました。その後、洞爺丸台風の被害に遭ったり、また財政再建団体に町が陥ったこともありましたが、平成に入り、また国有林の取得を段階的に進めていて、現在は4700ヘクタールあるという状況です。

続きまして、「森林の恵みを余すことなく」ということですが、循環型森林経営を基盤としており、そこから出る大径木は町内の製材工場で加工し建築用材として、そして製材の過程で出るオガコについては家畜用の敷料として、それぞれ活用しています。

また、中径木については、円柱加工をして土木用の資材に活用し、小径木については炭化して燃料剤として使用。他にも、炭の生成過程で出る煙を冷やして木酢液として利用したり、木酢液を水槽に浸して板材を底に沈めて、防虫防腐加工の外壁材としても活用しています。枝葉や葉っぱの利用も進めていまして、葉っぱは蒸留をして精油もしくはルームミストにする取組みも進めています。最終的にどうしても利用価値のない林地残材については破砕処理をして、公共施設のバイオマスエネルギーの燃料として利用しています。

こちらの資料の中央部分ですが、循環型森林経営は、伐ったら植えるを60年サイクルで繰り返す取組みを進めており、北海道で初めて下川町がFSC認証材の認証を受けています。そういった付加価値を高めた木材を需要先に提供しています。

それと、下川町を含めた道内4つの自治体でカーボンオフセットの取組みをしています。経済活動で出るCO2の排出量を下川町などの森林吸収で埋め合わせるというものです。また森林環境教育に関しては、下川町には認定こども園が1カ所と、小学校・中学校・高校がそれぞれ1カ所ずつありますが、例えば小さなお子さんは森の中に入って散歩をしたり、小学生・中学生になると実際に枝打ちを体験したり、高校生になると下川町の循環森林経営からバイオマスまでの取組みを学習するなど、15年間一貫の学びを進めているところです。

資料右ですが、循環型森林経営システムで、どうしても活用されない林地残材については、下川町の直営施設で、木質バイオマス原料製造施設という指定管理者が管理している施設でチップ処理をして、公共施設にボイラーの熱として提供をしています。このチップをバイオマスボイラーで使用することによって、重油と比較した場合のコスト削減額は、昨年度で約1,600万円ありまして、そのうち半分は今後のボイラーの更新費用として、残り半分を子育て支援策、例えば中学校までの医療費無償化、学校給食補助、子供の予防接種無料化といった施策の財源として、活用しています。

一の橋バイオビレッジモデル

また、コンパクトタウンということで、熱を中心とした集落再生「一の橋バイオビレッジ」の取組みも進めています。

一の橋集落は下川町市街地から車で10分ほど行ったところにあり、最盛期の1960年には人口が約2,000人あった集落です。林業を基幹産業として大変栄えた地域で、木工場や営林署、商店や小学校・中学校などがある地域でした。その後、人口減少が進み、2009年時点では100人を切り、高齢化率は50%を超える、いわゆる限界集落のような状況でした。町では2010年からこの集落の再生に着手しています。

この一の橋集落再生の基本的な考え方、コンセプトはやはり経済・社会・環境の同時解決ということです。経済面では、かつて林業で栄えた地域ですが、木工場がなくなり、産業が全くない地域になったため、新しい産業を興すということ。社会面では、高齢化への対応。そして、環境面では低炭素化をしながら同時解決を図っています。

集落の中央には、木質バイオマスによる熱供給施設があります。一の橋集落の再生を地区の方と幾度となく議論した時に、やはり高齢化率50%超える地域ということで、冬の除雪や買い物などが大きな課題で、またコミュニティが低下しているといった課題も挙げられました。

そういったところから、町では、ハード面では集住化住宅を整備したり、住民センターを整備し、住民センターには、警察官の立ち寄り所、住民の方々が自由にコミュニケーションを取れるように住民共有のスペースを設けています。集落には商店が全くないため、地域食堂を設け、そこで地域の方にご飯を食べていただいたり、ちょっとした日用雑貨も置くなどして、利用していただいています。

産業の部分ですが、町で特用林産物栽培研究所を整備し、しいたけ栽培により、新しい産業を生み出している状況です。現在、このしいたけハウスでは、30名ほどの方が働いています。こういった施設には、全て地下の熱導管を通して熱と給湯といった熱供給をしてます。

先ほどはハード面の話が中心でしたが、やはり集落を再生する上でソフト面の対応が重要で、総務省の「地域おこし協力隊」制度を活用しながら、この集落の再生に取り組んでいるところです。
協力隊の方々にはこれまで、廃屋の撤去やICTによる見守り、生活買い物支援、冬の除雪、地域食堂の運営といったことをしていただいています。総務省の協力隊制度は3年で卒業になりますので、引き続きこの集落の再生を進めるために、卒業された方で NPO を立ち上げ、「NPO法人地域おこし協力隊」として地域の集落再生に取り組んでいるという状況です。

資料の一番下に記載しておりますが、現在一の橋集落の状況については、人口については現在もほぼ100人で、対策を講じる前とは変わらないですが、その一方で高齢化率は50%を超えていたものが、現在25%で生産年齢人口の割合が増加している状況です。この地域に様々な方が移住され、起業されているところです。

こちらは下川町の全体的な状況です。

人口動態については、この青のグラフが自然動態人口で、こちらは2005年からずっとマイナス、生まれてくる方よりも亡くなる方が多いということです。一方、赤の折れ線グラフの社会動態は、近年ではプラスになる年もあり、転出者より転入者の方が上回っている年もあります。また近年では、移住される方が多いことが、本町の特徴となっています。

経済面では、町民税の推移は2005年では約1億円でしたが、現在は1億5,000万円ほどです。環境面では、下川町全体の熱エネルギーの自給率が現在56%になっています。

こういった取組みを進めた結果、2017年のジャパンSDGsアワードで大賞を受賞させていただきました。

SDGsを取り入れた地域づくり

ここからは、2015年9月に国連でSDGsが全会一致で採択された以降の取組みの話をさせていただきます。

資料中央の赤文字「2030年における下川町のありたい姿」についてお話しします。我々は下川版 SDGsと呼んでいますが、SDGsの17の目標に対し、下川町は独自に7つの目標をありたい姿として設定しています。このSDGs・ありたい姿は、町民の方々が中心となり、役場のこれからの2030年を担う中堅どころの職員と一緒に、幾度となく議論を重ねて作成しています。そしてこのありたい姿を、ただ単に町民が作ったといったことではなく、我々の行政計画(総合計画・SDGs未来都市計画・総合戦略)の将来像としても位置づけ、各種事業を展開しながら達成を目指していくということで進めています。

また同時に、SDGsのツールを使い、下川町のブランドを情報発信しながら地域の課題に取り組んでいます。
しかし、町内の課題を町内で全て解決することはなかなか難しいところもあるため、下川町で不足している専門的な知識・技術・資金を地域外から提供いただき、こちらからは食料・木材・エネルギーを提供するという、お互い良い関係を形成しながらまちづくり・ありたい姿の実現を進めているという状況です。

こちらが下川町独自の目標である7つのゴール、ありたい姿です。

ゴール1「みんなで挑戦し続けるまち」から、ゴール7の「子どもたちの笑顔と未来世代の幸せを育むまち」まで、7つの目標を設定しています。

こちらの下川版SDGsですが、ポイントが4つあります。まず、1つ目は、先ほど説明させていただいたように、住民が中心となって作成してきたというところです。2つ目は、このありたい姿を、町の総合計画という最上位計画にも将来像として位置づけていることです。3つ目は、町民が作ったありたい姿について、現在きちんとまっすぐ向かっているか、ずれてはいないかを測るために、指標を設定しながら進捗管理をしていることです。4つ目は、このありたい姿の実現に向けて、町内外の様々な人達と連携を取りながら進めていることです。

こちらのピラミッドは、総合計画の構成図になります。

一番上が基本構想で、SDGsを総合計画の目的に位置づけ、また先ほどお話しした、ありたい姿を将来像として位置付けています。

2階の部分は、基本計画の前期4年・中期4年・後期4年で、下川町の総合計画も最終年を2030年として、各種施策を展開しています。1階の部分は進捗管理計画兼財政計画で、財政の持続可能性も重要な部分ですので、各種事業の進捗管理を進めながら、まちづくりをしています。

こちらは、第2期のSDGs未来都市計画で記載している経済・社会・環境の各種事業になります。

これらの事業を通して、政策推進課内に設定しているSDGsパートナーシップセンター、様々な人・企業・団体といった方々との共創により社会地域課題の解決を進めているところです。

こちら資料中央に下川版SDGs7つの目標がありますが、左上の様々な主体の方と連携させていただいています。三井不動産さんや吉本興業さん、自治体では横浜市さん、昨年からは東急ホテルズさんや小林製薬さんといった方々とも連携させていただいています。そしてSDGsを使いながら、各種メディアにも情報を発信しています。

教育面では、ありたい姿を作成した時に、やはり2030年なので子供達にも色んな意見を聞こうといった取組みをしています。また、このありたい姿の議論の時に、女性視点でまちづくりを見る・捉えるということが下川町に不足しているとの声もあり、女性の方々が女性視点でまちづくりを見るために、新たな団体が起ち上がってきています。

資料の右下ですが、移住・起業家誘致ということで、下川町のSDGsの取組みに共感いただける方々の誘致活動も進めているところです。

最後になりますが、SDGsをまちづくりのツールとして活用するメリットとして4つ記載しています。

1つ目はチェックリストです。SDGsの17目標から下川町を見つめ直すことによる新たな課題発見・気づきから、結果的に下川独自の7つの目標が生まれました。2つ目は、バックキャスティングの考え方で、2030年の目指す将来像から逆算して、今必要な事業は何だろうと考えて良質的なまちづくりを進めていくということです。3つ目はブランディングです。SDGsをフレームワークとして、様々な情報発信を進めています。4つ目がパートナーシップで、SDGsをきっかけに様々な人達と出会いながら地域づくりをしています。

この4つが、SDGsをまちづくりとして取り入れる最大のメリットと考えています。

私からの説明は以上です。