開催レポート

開催報告 ODS第6回研究会 事例紹介③
「SDGsでつながるまち さがみはら」(神奈川県相模原市)

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構(ODS)は、さる5月13日に、第6回研究会「SDGsによる持続可能な地域の発展を考える~政府の考える地方創生SDGsとSDGs未来都市選定自治体の取組み事例~」を開催しました。この研究会では4名の方に講演をいただきました。
本稿では、事例紹介③としてご講演頂きました神奈川県相模原市市長公室みんなのSDGs推進課 総括副主幹 榎本幸二様のご講演内容をご紹介します。

「SDGsでつながるまち さがみはら」
神奈川県相模原市 市長公室みんなのSDGs推進課 総括副主幹 榎本 幸二 様

皆さんこんにちは。相模原市役所の「みんなのSDGs 推進課」の榎本です。
これまでの下川町・南砺市さんの環境・社会・経済の3側面を政策と結び付けて進めているお話とは、少し毛色が違うところもあるのですが、相模原市の取組みの紹介をさせていただければと思います。
この「みんなのSDGs推進課」は今年からできまして、私自身は、2019年頃からSDGsに関わり始めました。

相模原市概要とSDGsの取組み

まず、相模原市をご紹介させていただきます。

相模原市は神奈川県ですが、神奈川県というと横浜とか湘南のイメージがあるかと思います。神奈川県の一番上の方にあるのが相模原市です。半分は山で、半分は街という特徴がありまして、市町村合併で山の部分が入ってきまして、このような形になっています。

相模原市のSDGsの取組みとして、特徴的なものを紹介させていただきます。まず市の総合計画のなかではSDGsをしっかりと反映させています。

他に、例えばコロナでバイトがなくなってしまった大学生に毎月食材支援を行なっています。民間事業者や農協さんなど、いろいろな方が支援していただいて続いています。土曜日だけではなく、たまに平日も入ると結構賑わい、大学生から感謝されている事業になっています。

次に、コロナになってから、SDGsの視点を持ってコロナ対策を行う事業者に補助金を交付し、支援しています。

例えば、テイクアウトでプラゴミが増えているため、非プラスチック製のテイクアウト容器を買う時の補助であったり、津久井産材という地元の木を使ったパーテーションや電動バイクなどが対象です。こういう取組みについては、コロナの交付金を使わせてもらい、補助金を出した経緯がございます。

経済・社会・環境の3側面を意識した取組みとしては、以前から「森の机」という、小学校の学習机を外材の合板から地元産の天然木に交換する事業をやっています。この事業は、もともと意識していたわけではないのですが、結果的にSDGsの取組みとなっています。

以前は外国産の木を使っていたため、海外での森林伐採や、輸送によって、CO2の排出が発生していました。また、この外国産の木を加工して、学校が買う形になっていましたが、お金の流れも、市内にはあまり循環せず、全体的にあまり良くない循環となっていました。

それに対し、この事業では、地元の木を間伐し、地域の木工所で加工して地元の学校に入れるため、環境面でも間伐が進んだり、地域の経済でも木工所が収入を得られ、お金も市内に留まるということで、様々な良い効果があります。SDGsのいろいろなポイントを捉えた事業ではないかと思っています。

ここからが本題ですが、市役所だけでSDGsを施策として取り組んでいても、なかなか良い結果が出ません。
とにかく市全体で盛り上げていきたいと思い、まずはSDGsを知ってもらう、普及啓発の取組みとSDGsの取組みを行なう事業者さんとの連携強化・全市一丸となっていきたいという想いから、「みんなのSDGs」と題して、様々な取組みをしています。

市役所の取組みからみんなのSDGsへ

まず、取り組みの1つ目は普及啓発です。

最近では、かなりSDGsの認知度は上がっていますが、3~4年前ぐらいは「何それ?」という状態だったため、まずは、知ってもらうことが大事だと思い、最初にホームページを作りました。
かっこいいホームページを作りたかったんですが、自分がよくわかっていなかったこともあり、よくわからない人がわかるようなものにしようと、キャラクターなんかも使ってみました。これが比較的反響があり、多い時は月間30万ページビューぐらい見ていただけるようなホームページになっています。

ホームページでは、市の取組みも紹介していますが、そこはあまり力を入れてなくて、企業ですとか団体の取組みを一生懸命紹介しています。いろいろな人が見たくなるような人にスポットをあて、企業代表の方などに話を聞いてるのですが、楽しい感じで写真に写ってくれたりと、喜んでもらっています。

良かった点として、このホームページに載せてもらって新たな取引先が増えたというお声もあり、自分達だけでなく、地域内の方々の情報を積極的に発信しているのは、すごく大事だと思っています。

また、とにかく知ってもらいたいということで、これは日本一かと思っていますが、市役所に大きなカラーホイールがあります。ここから顔を出して写真が撮れるなど、インスタ映えスポットになるはずでしたが、コロナの影響もあり、市役所にあまり人が来ないため、現在は、本庁舎ロビーでおとなしく鎮座しています。コロナが落ち着いた後など、いずれはイベントなどで写真を撮ってもらって、発信してもらおうと思っています。

それから、普及啓発の意味で、富山市さんを参考にさせていただき、フードロス自販機を置きました。市民の方に興味を持っていただき、食品ロスについて考えるきっかけになっていると思います。

こちらはちょっと自慢できると思っていますが、すなばコーポレーションさんという企業が作ったカードゲームを相模原市オリジナルとして、少し改造してもらったもので、すごく面白いゲームです。
子供でも楽しめ、循環型社会とかパートナーシップについて、すごく学べるもので、これを小中学校を中心に幅広く展開しています。ファシリテーターとして自分たちが行くこともあれば、貸し出しで学校の先生にやってもらうこともあるのですが、去年だけでも30校ぐらいから声がかかって、かなり評判が良いものが作れたと思います。

SDGsについて学べるだけではなく、市の取組みなどをカードに入れています。シゲンジャーというキャラクターとか、ロボット産業特区になっているので市のロボットの写真とか、市内にある水素ステーションとか、メガソーラーシステムとかを盛り込んだり、あとは、地域のホームタウンチームのスポーツチームとか、卵が有名なので親子丼とか、市のことも知ってもらいつつSDGsも学べる、楽しみながら学べるツールになっています。

さがみはらSDGsパートナー制度

ここからは連携体制の強化について御説明したいと思います。

普及啓発もあり、いろいろな企業・団体にSDGsについて興味を持ってもらって取り組んでいただいております。
それをいかに繋げていくかということを考え、パートナー制度を作り、現時点で596の企業や団体に登録していただいています。

工夫として、登録された企業にSDGsを発信していただけるステッカーを作ったり、地元のPRもしたかったので、地元の木で作った結構立派な盾を市長から直接渡すようにしたりしています。これらは、いろいろな店舗に飾っていただくなど、どんどん広がりを見せているところです。

こちらは、内閣府さんの取組みを参考に、パートナー間の連携強化を目的としたプラットフォームを作りました。

登録して終わりという、団体・企業がいるなかで、いかにそこをつなげていくか、工夫をしてみました。機能としては、パートナーズフォーラムという掲示板があります。そのほか、個別マッチング支援やパートナープロジェクトなどを進めています。

官民連携プラットフォームでは、メーリングリストやメルマガでいろいろな情報が流れてくるのですが、特定の情報を流して欲しいといった要望には、どうしてもメールだとうまく表現できないものがありました。そのため、アクセスの多かった市の特設サイトの中に、掲示板を作りました。

これまで、市からのメルマガでは、この会社がこんなものを作っています、といった案内がしづらかったのですが、掲示板であれば、イベントや商品・サービスの案内を、自分たちがそれぞれPRできます。あとは、こんなメディアに登場しました、団体さんがこんな支援を求めています、といったことも発信できる掲示板です。すべての情報をすぐに公開するとまずいものもあるため、市役所の事務局で内容を確認して問題なければ公開しています。

現在、既にいろいろな方に情報を発信していただいており、うまく使っていただいていると思っています。

本日の講演情報も掲載しておりまして、掲示板のなかではアイキャッチもしっかりできるよう、画像を貼れるようにしています。こんな感じでずらっと情報が並んでいて、イベントを知りたい、商品を知りたいといった情報別に、タグもつけています。

「これまで、全然人が集まらなかったが、これに載せたら人が来た」といったお声もあり、域内であれば比較的集客にも効果があると思っています。

こちらのマッチング支援については、内閣府さんと同じで、事務局でマッチングシートを受け取り、パートナーさんに投げて、OKであれば連絡先交換といった形です。すでに何件か活用していただいて、実際にマッチングがうまく行ったという事例もあります。

利用者様からよく言われるのは、事業者さんが突然営業に行くより、この仕組みが入ることで安心感に繋がるということです。市でもあまりに変なものはフィルターにかけますので、安心感によってパートナー関係が、生まれやすくなっているのかなと思っています。

さらに、パートナープロジェクトという仕組みがあります。

提案者が仲間を集めてこんなことをしたい、というのを事務局がヒアリングし、プロジェクトを提案してもらい、その提案シートを全パートナーに共有します。そして、参画希望者が集まった場合、プロジェクトスタートという形になります。いろいろな注目も集めたいと思い、特設サイトで進捗状況を公開しております。まだ始めたばかりで、具体的なものは公開されていませんが、今後、徐々に進んでいくと思っています。

地域の方々を繋げていくことが自治体の役割

このように、連携体制の強化や普及啓発に取り組んでいたところ、意外にいろいろなことが生まれてきました。
例えば、市内の橋本というリニアが来る駅で、SDGsカラーアートプロジェクトが生まれました。

こちらは、企業に費用を出していただき、商店街と福祉施設、市が連携してSDGsカラーをモチーフにしたアートで街を彩るプロジェクトです。市としては特に費用は負担せずに、いろいろな好循環がありました。

商店街では、街が明るくなったり、このアートを見に来る人がいたり、福祉施設では、障害者アートの作品を街に掲示するなど、すごく良い取組みとなっています。

企業にとっても社会貢献活動に留まらず、こちらのJTさんでは、喫煙所というイメージが少し明るくなったりと、それぞれの役割のなかで、みんながプラスとなる取組みだと思います。

また、「SDGs本を読んで未来を絵にするコンクール」という取組みは、ある財団法人さんからご提案をいただきました。費用負担が発生するということでしたが、パートナーさんや事務用品組合さん、書店組合さんに声がけしたところ、OKをいただきました。書店組合さんとしては、本離れが進む中で、本に対して子供たちの意識が向いてくれる機会として、事務用品組合さんは、ダイレクトに絵の具や画用紙の販売に繋がりますので、それも含めて実現しました。

当初は、応募が30件くらいくればいいかな、と思っていたのですが、490件もの応募がありました。図書館が推薦したSDGsに関連する本とそれ以外の自由図書もOKということでしたので、関係ないテーマの作品も含めて、本当に素敵な絵がたくさん集まり、楽しい取組みとなりました。

こちらは、外務省さんを参考にして「さがみはらSDGsアワード」を、地域を盛り上げる団体である相模原青年会議所さんと津久井青年会議所さんとコラボし、開催いたしました。

結果として、こんな活動があるんだというのを我々が知る良いきっかけになったと思います。PTAさんが最優秀賞を受賞したりと、我々があまり知らなかった団体からも応募があったりして、すごく勉強になる取組みでした。

こちらは、自動販売機業者さんと連携した「飲んで貢献SDGs」という取組みです。

市内のパートナーさんにお願いをしたところ、14箇所にSDGs推進自販機を設置していただきました。これは先程のフードロスとは違って、単純に売り上げの一部が市のSDGs事業に寄付されるものですが、一般の市民の方々には、SDGsはハードルが高かったり、“意識高い系”というイメージがあるなかで、普通にドリンクを買うだけで、貢献ができます。

企業さんのなかには従業員への意識付けのために設置したというところもあり、市としては本当にありがたい仕組みです。

最近の取組みとしては、「容器を堆肥に!」というものがあります。

当初、神奈川県からの紹介で「エコイノジャパンさんという会社が完全生分解性の容器を作っているが、堆肥化するところや販売するところがない」という話をいただきました。そこで、本市のSDGsパートナーズのなかで堆肥を作っているところにお声がけをすると、快く了承をいただきました。

今度、相模原市で予定しているツアーオブジャパンという自転車のレースで、弁当販売用の容器として、1,000個くらいを使用する予定です。回収した容器は堆肥にして、また農作物を生産することで、それが弁当のおかずになるという、循環型モデルの実現を目指す、実証実験のような形で取り組んでいます。

相模原はそんなに有名ではなく、キャンプ以外で来る人もあまりいないと思うのですが、SDGsの視点でみると結構良い場所があります。日本フードエコロジーセンターさんという、第2回ジャパンSDGsアワードで大賞を受賞した企業があるのですが、そこは工場見学ができるようになっています。

本日、そこで工場見学とお話を聞いた後、ソーラー支援をやっている事業者さんのところでブルーベリー狩りができるツアーを発表しました。6月7月の梅雨時の実施で雨にならないかと心配しているのですが、こういった形で地域の中でSDGsに取り組み、学べる場所というのをどんどん探して、展開していきたいと思っています。

市外からも、もちろん来て欲しいですし、市内の人でも市内にこういうところがあると知ることで、市に対する愛着や誇りを持つことに繋がるのではないかと思っています。私も全然SDGsのことを知らない頃に、日本で一番になった会社が市内にあるのだと思うと、やはり嬉しい気持ちになりますので、こういったことをどんどん広めていきたいと思っています。

最後になりますが、「みんなのSDGs」ということで、SDGsはみんなが主役だと思います。それぞれの立場や分野で取組みを進めることはもちろん大事ですし、すでにやっている方はたくさんいるのですが、その取組みが繋がることで大きな力になり、持続可能な地域社会が実現するのでは、と思っています。

市役所として、新電力やバイオマスなど「これだ」という取組みもやりたいのですが、そこまで至っていない状況があります。そのなかで、地域の方々の力を借りて、地域のSDGsを掘り起こし、繋げていくことが地方自治体の役割のひとつではないかと考え、我々がまずできることを、一生懸命取り組んでいるところです。

この取組みであれば、どこの自治体でもできることだと思いますので、少しでも参考にしていただければと思っています。以上で相模市の紹介となります。どうもありがとうございました。