連載|日本版MaaSを実装せよ。(1)
2019年5月14日都内―「MaaSを日本に実装するための研究会」会場には、交通系事業者のみならず、ICT関係者、自治体など、多岐にわたる業界の関係者が集まっていた。実を言うと、本研究会は事務局の想定を超える参加希望があり、会場を急遽変更したほどで、MaaSへの関心の高さがうかがえた。2020年1月現在、本研究会は4回の開催を終え、次回は2020年2月7日に開催が予定されており、年度内には提言を行う予定だ。
昨今耳にするようになったMaaSとは(会員の方々には言わずもがなかもしれないが)、電車・バス・タクシー・レンタカー…といった交通の種別を超えて、人の「移動(モビリティ)」を シームレスにするICTを用いたサービスを指す。先行しているフィンランドなどでは、スマートフォンなどを用いた目的地までの「ラストワンマイル」をも含んだ一貫した検索・予約・決済が可能になるなど、新たなサービスが実現されている。とはいえ、MaaSにはいまだ明確な定義などはなく、現在進行形で開発されている概念といってよいだろう。だからこそ、日本の交通関係事業者は、交通データ収集による新価値・交通を超えた新サービスの創出に、また自治体は、地域が抱える交通問題について解決の糸口になるのでは、とMaaSに期待を寄せている。
本研究会では、自治体によるプレゼンテーションが行われ、それぞれの地域の抱える課題―観光客の周遊性向上、オーバーツーリズム対策、郊外部における二次交通の確保、運転手不足など―とともに、現在の実証や検討状況の共有がなされた。一部の自治体からは、遠隔医療×モビリティの実現など、交通状況の改善にとどまらない地域住民の生活面の向上に言及する場面もあり、これは第1回研究会で登壇された石田座長による講演タイトル「人の幸せとモビリティ」に通ずるものだ。言わずもがな、そこに住む人の生活を常に考える立場にある自治体は、日本版MaaSの実装を進めていく中心部となっている。
本連載では、「MaaSを日本に実装するための研究会」をふりかえり、日本版MaaSの実装に迫る。
連載第2回では、自治体のMaaSへの取組を紹介する。